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第8話 冷たい温もり(*)
紅葉は言うと、そっとスラックスのベルトに手を掛けた。
臣に屹立した自身を見せるのは、何度もしてきたことだし、恥ずかしくないと思っていたが、いざ自分でするとなると、予想以上に手がもたついて時間が掛かる。ベルトの前を開けて、穿いていたボクサーブリーフをずり下げると、もったりと熱の溜まった半勃ちの屹立が露わになった。
「臣ちゃん……」
握って、臣を想いながら少し扱くと、みるみるうちに大きくなるのが自分でもわかる。
待ち望んだように勃起した紅葉は、熱のこもった息を吐きながら、恐るおそる臣の方を見た。
「あ……」
その刹那、臣が額をガラスに擦り付けて、声を上げた。肩が少し上がり、緊張が走る。じん、とインカム越しに聞こえてくる臣の、少し兆したような欲情を孕んだ声に、紅葉の手の中のものが、ひくんと反応した。
「臣ちゃんも、してみせてくれる……?」
「紅葉……っ」
「こうしてると、恥ずかしい。でも、臣ちゃんに見られながらするなら、恥ずかしいのが良くなる気がする」
「ぁ……」
キュプ、と先走りの伝う先端を、ガラス越しの臣のいる方へと押し付けてみる。キン、と冷えていて、まるで温もりのない人工物への接着は、その向こうにいる臣の存在によって、紅葉をあえかな気分にさせた。
「ん。当たり前だけど、冷たい……」
「あ、当たり前……だろ」
「でも、臣ちゃんが触ってくれたら、気持ちいい気がするよ」
「そん……っな、の……」
「触って、臣ちゃん。俺の、先っぽ……」
その声に応えて、臣がひたりと指を接着させるのが、見えた。
「ん。気持ち、い……」
紅葉が言うと、臣がちょっと躊躇った。
「う、そだろ……っ、そんな──……っ」
言いながら、ガラスに接着した指先が、おずおずと紅葉の鈴口を撫で上げるような動作をはじめた。その動きを視認するだけで、熱い衝動が精管を通り、湧き上がってくる。まるで本当に触れられているみたいに、次第にガラスとの接着面が、温もりを持ちはじめた気がする。
「臣ちゃんも、する……? 俺がかわいがってあげたいところ、どこか当ててみて?」
「っ……」
そっと紅葉が促すと、散々躊躇った臣だったが、やがてTシャツの裾を持ち上げ、顔を逸らしたまま、ゆっくりと首のところまで持ってきた。
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