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第9話 熱い温もり(*)
桜色をした左右の乳首が、Tシャツの下から現れる。そこは興奮に少し色づいていたが、まだ大人しげだった。
「っ……ん、っ……」
「乳首、触って欲しい……?」
紅葉がそっと尋ねると、臣は顔を朱に染めながら、わずかに頷いた。逸らされた顔の、目尻のあたりが赤く染まっており、欲情しているのがガラス越しにもありありとわかる。
「可愛い乳首だね。最初は無垢な色をしてるのに、弄ると段々、膨れて赤くなってくるの、知ってた?」
ぶんぶんと首が横に振られる。紅葉は嗜虐心から、もう少しガラスの近くへ寄るように言った。すると、臣が躊躇いながらも、胸の尖りをくにゅりとガラスに接着させるのが見えた。
「ん……っ」
刹那、冷たさに驚いたのか、臣が呻いた。
「臣ちゃん、乳首、気持ちいい……?」
「うる、さ……っ」
「尖ったところを、触ってあげるね。指の腹で撫でてあげる。今日は、すぐに大きくなるね」
「ぁ……っお、前が……、する、から……っ」
臣が身じろぎするたびに、ぐにぐにとガラスに接着された乳首が押し潰された。ガラスのせいで歪んだ臣の乳首を、紅葉がガラス越しに、指先で捏ねる動作をする。それだけで、ぷっくりと勃ち上がった乳首が、敏感そのもののように色を濃くするのがわかった。肌に直接触れられない分、ガラスを押す紅葉の指に力が入る。つんと上を向いた乳首を、指先で挟んで捏ねたいと思う分、遮蔽物越しのリアルが、もどかしい。
「ん。指で……、くにくにされるの、臣ちゃん、好きだよね?」
「っん……っ」
こくん、と小さく臣が頷いた。
無機質な障害物のガラスが、次第に紅葉と臣の体温で温められて、両側からじんわりと温もりを持つようになっていく。
「臣ちゃん」
「はぁ……っ、な、んだよ……っ?」
「もう少し先に進みたい。いい……?」
「……っい、まさら……っ」
紅葉が不安げに語りかけると、臣が上気した頬のまま、ちょっと不敵に笑った。視線を下にやると、臣の前も、衣類の中で存在を主張しはじめていた。ガラス越しの不安定な接触に、臣が紅葉と同じように、感じているらしいことがわかり、紅葉はさらに臣を愛したいと強く思う。
ままごとみたいな接触を、視覚の力で本物の愛撫にすり変えながら、互いの足りない部分を想像力で補う。紅葉は臣を引き寄せられない分、もどかしげにガラス面を捏ね、撫でた。
「臣ちゃん、乳首、自分で大きくできる……? そしたら、舐めてあげる」
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