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第13話 あなたがほしい(*)

「ぁ……ぁ……っ、は、挿入って……くる……ぅ」  紅葉──と臣が感極まり呼んだ瞬間、トロトロと臣の脚の間を、白濁混じりの先走りだか精液だかよくわからない半透明の粘液が、滴り落ちた。 「ぁあ……っ、ん……っ! ぁ、嘘……っ、紅葉、ぃ……」  オメガの射精が本格的にはじまった証拠だった。オメガの遂情は、長くダラダラと続くのが特徴だ。普通の男性とはまるで違う身体構造を持っていることを、紅葉も一応、知ってはいたものの、実際に目にするのは、初めて臣を抱いた日が最初だった。  そして、こうなってしまったが最後、臣が満足してイくまで、それは止まない。本格的な性感の扉を、よりによってガラス越しに開けてしまったことが、紅葉には口惜しくて、今すぐに臣を抱いて、中を抉りながら抱き潰してしまいたいという欲求が湧いてくる。 「奥まで……入れてあげようね、臣ちゃん……っ、もっと、快くなるように……」 「は、ぁ──……っ」  紅葉の言葉に反応するようにして、それまで孔の浅い部分を擦っていた臣の指が、ぬぐ、と奥へと挿入される。同時に臣の腕にガラス越しから腕を重ねた紅葉は、立ちバックの姿勢で、自分たちを隔てているガラスの壁へと、自分の勃起している性器をぎゅぷ、と押し付けた。 「ぁ、……っぁ! 中、もっと……っ」 「んっ……、いいよ、臣ちゃん。全部あげるから、好きなだけ食べて……っ」 「んぃ──……っ、も、イきそ……っ、ぃ、っ……、イく、イく……っ!」 「っ」  孔を穿つ臣の腕が、次第に痙攣しはじめる。  同時に、紅葉の自身を扱く手も、速くなっていった。 「臣ちゃん……っ、いい……? 俺は、すごく気持ちい……っ、臣ちゃん……っ」 「ぁ! もー……っ、イッて、ぃ……っ? 紅、葉……っ」 「ん。いいよ……っ、俺も……っ」  最後の方は、互いにガラスにもたれ掛かりながら、身体を揺すっていた。  臣がぶるぶると爪先立ちのまま孔に入れた指をぐぷ、とかき回す。同時に前を扱くと、ついに堤防が決壊するようにして、激しく長い絶頂が起こった。 「は、ぁあぁ──……っ! ぁ、ぁあ──……っ!」 「──っく……!」  ほぼ同じタイミングで紅葉も、ガラスに映る臣の後蕾目掛けて白濁を吹き上げる。  本来だったら、そのまま幾度となく抽挿を繰り返し、塗り込めるように精液を中へ、中へと押し込むのだが、ガラスに阻まれた状態で、それをしようとすると、フラストレーションが爆発しそうだった。 「はぁ……っ、は……っん、んん……っ」  絶頂の余韻に浸りながら、臣は静かに強張った四肢を解いていった。ガラスに遮蔽されてさえいなければ、手伝うように彼を助けながら、心臓の鼓動と温もりを感じるところだが、阻まれた世界では、そんな当たり前のことさえ、ままならない。

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