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第11話

「お邪魔します。うわぁ、とても男の一人暮らしとは思えないなぁ」  翼のマンションで、和哉は思わず声を上げていた。  清潔に掃除された床に、必要最小限の家具類。  窓辺の観葉植物は活き活きと繁り、かすかにアロマの香りもした。 「よかったら、シャワー使いませんか? その間に、服を乾かしますから」 「じゃあ、遠慮なく」  和哉は、腹をくくっていた。  もし、翼が関係を求めてきたら。 「その時は、なるようになるさ」  熱いシャワーを浴びながら、和哉はつぶやいた。  ただ、これは一夜限りのことと思え。  そう、自分に念押しすることも忘れなかった。 「峰松くんは、寂しいんだ。ただ、無性に誰かに傍に居て欲しいだけなんだ」  和哉は、優しい男だった。  ただ、ただ優しかった。  その優しさゆえに、『良い人』で終わってしまった恋の入り口が無数にある。  和哉の心の中にもまた、やまない雨は長く降り続いていたのだ。

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