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第12話

 和哉がバスルームから出てくると、コーヒーの香りがした。 「おぉ、いい匂い」 「コーヒー、淹れましたからどうぞ」  嬉しいね、と口をつけると酸味が先に来た。 (モカ、か)  酸味より苦味を好む和哉には、苦手なコーヒーだ。  しかし彼は、笑顔を作った。 「美味い。ありがとう」  その言葉に、素直に喜ぶ翼が可愛い。 「僕もシャワー浴びてきていいですか?」 「どうぞ、ったって。俺の部屋じゃないのにな」  笑いながら、翼はバスルームへ消えていった。  カップを片手にキッチンへ入ると、そこにはコーヒーを淹れる器具類が揃えてあった。 「ちゃんと、ドリップしてくれたんだ」  そう思うと、モカでも嬉しい。  翼の心遣いに感謝しながら、和哉はそれらを丁寧に洗った。  カップも、ちゃんと片付けた。  終わる頃に、翼が風呂からあがって来た。

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