そして、その日はそれからあまり話もせずに放課後になってしまった。だから、 リオに、"いっしょに帰らない？"と言ってみた。 「・・俺、いっしょに帰らないの知ってるでしょ？」 「まあ、ね。リオちゃんは車だし。だからさー。校門まで？」 リオは、はぁ、とあきれたようにため息をついた。 「カズヤってホント変わってるね」 「カズヤって言ってくれたー嬉しい」 「は、何言ってるの？そんな事どうだっていいじゃん？」 そうなんだけども、あの、屋上でのやりとりの後あまり話さなかったし、妙に寂しげな様子のリオがすごく気になったから、わざとふざけて言って見たんだよ。 「・・・違うよそれすっごく大事な事だよ」 まあ、思った通り、冷たくあしらわれたけれども、めげないでリオの後をついて行った。 でも、俺の名前を苗字の西本じゃなく名前の和也・・・カズヤって言ってくれたのはやっぱりちょっと嬉しい。 校門近くまで来た時、リオが急に立ち止まった。 「どうしたの？リオ？」 リオは、少し斜め前のほうをじっと見ていた…その視線の先を見ると。 通りの向こう側の信号に、誰かがいた。そいつもこちらをじっと見ていた……俺らと同じぐらいの歳の……そしてそいつはうちの生徒じゃないほかの学校の制服を着ていた。 ・・・・あ、アレって・・・ 「アレって、リオの中学の付属高校の…」 そう言った瞬間に、リオはぐっと俺の腕を掴んだ。 「来て…」 リオは有無を言わせずに俺の腕を強く引っ張って、いつも送迎されている車の前まで一緒に来た。 ふと、通りの向こうを見ると信号が変わって"そいつ"がこっちに駆け寄って来るようだった。 ・・リオは俺の耳元に近づいて囁くように言った。 「一緒に乗って」 ちょ・・それは、反則でしょ？耳元に近づくって・・・。 思わずリオを振り返って見ると、にっこり微笑む様子を見せた。だけど何処かその笑顔はぎこちない。 "何？なんだ？" 疑問に思いながらも、そんな誘いを断る理由もなく、素直に従った俺だった。