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あれが汰一?
車に乗り込むと、すぐリオは、
「すぐ出して・・・」
運転手の・・多分、竜輝会の人だろうと思われる男に言った。
ふと窓の傍らを見ると、通りの向こう側にいたその彼が既に追いついてきていて、何か叫んでいるようだった。
よく聞き取れなかったけれども、その口ははっきりと、"リオ"と言っているのが分かった。
そして車は勢いよく出た。
「リオ?どういう事?」
俺が思わず聞くと、リオは表情を硬くして言った。
「ごめん、俺、何かどうかしてる」
「今の誰?」
すると、リオは俺をちらっと見てそして、再び目を逸らした。
「――・・汰一」
アレが汰一・・・。なんとなくそんな気がしたんだけれども。だけど……。
そっと後ろを振り返る。
"汰一"が呆然と立ち止まっていたのが見えた。
中肉中背って感じで?なんかアイドルにいたよなーって感じのルックスで・・
"なかなか、イケメンじゃないか"
と思った。でも、まあ、俺程じゃないけどね。
「……そっか。分かった・・・だけど、俺を車に乗せてさ、何処に連れて行くの?」
「・・・それは・・・」
ホントに何も考えていないようだった。
「・・・ごめん。ホントに、降りていいから・・・」
「ってかさあ、リオちゃん。乗ってって言ったり、降りてって言ったり、勝手だと思わない?」
「ごめん・・・」
消えるような声のリオ。いつものリオらしくない。
その動揺があの"汰一"ってやつのせいだ。なんだかすごくムカつく・・・。
「ま、いいけどさ、ね。俺、リオんち行っていいよね?」
「…え?」
物凄くびっくりしたように俺を振り返ってみた。
「リオの部屋にも行って見たいけど、でもリオの家を見てみたいんだ」
何しろ、竜輝会のだよ。
リオは、
「……いいよ」
と暫く押し黙ってから冷ややかに言った。
そして、その表情はいつもの冷たい表情に戻っているのに俺は気が付いた。
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