… ……… ………… その日。カズヤが帰ってからしばらくしてスマホに電話がかかってきた。 画面に表示されていたのは "汰一" 汰一の連絡先はなんとなく消せずにいた。俺は着信画面に"汰一"と表示されたのを見て一瞬、出るのを躊躇した。 いきなりの電話ってどうしたらいいんだろう。lineとかだと無視するとか思ったのか、電話でもこのまま無視しようかと思ってしばらく放置をする。 だけど、しつこく、繰り返し鳴り続ける着信音に堪らず電話に出る。 『……理雄？』 汰一の声だ。 「……何？」 『…あの……』 そして無言になる汰一。暫く待ってもなかなか話さない。 「何？用が無いなら切るから」 『……切らないで』 「何？」 そして再びの無言……の後、やっと声が聞こえた。 『理雄、ごめん』 「……？何言ってるの？」 『本当はずっと謝りたかったんだ……でも、言い出せなかった……それが違う学校へ行ってしまった……高校には理雄がいない。俺は、理雄の事を遠くで見られればいいと思っていたんだけど……。そこではじめて本当に分かったんだ。なんで、俺は言わなかったんだろうって』 そして、再びの沈黙。耐えられなくなった俺は、 「他に用が無いなら切るから」 と言って携帯を切ろうとした。 『待って……俺はお前に謝りたい以上に……言いたかったんだ』 電話の向こうで小さく息を吐く音が聞こえた。 『俺、お前が好きだ』 「……それが……？俺だってそうだったよ」 『違う!!そういう"好き"じゃなくって』 「・・・・・」 『お前と一緒にいると俺はおかしくなりそうだった。だから……』 「……だから、何？今更だ。今更遅い。なんでその時に……」 だって俺は・・・・。 『俺は理雄を……ふれてはいけない、ふれたら壊れると思っていた。だから……だから、いっしょにいられなかった」 小さく囁くように電話の向こうで汰一が言った。 「……そんな、勝手な思い込みで……」 結局、汰一も、勝手な理想で自分を見ていた。それが……。 『理雄に話しかけようにももう話しかけられなかった。だから、いっそのこと嫌われたほうがいいと思った。でも、中３になってから理雄はもう誰も寄せ付けなくなって』 そう、あの時は外部を受験する事しか頭になかったから、脇目も振らずにずっとずっと勉強してたんだよ。 『だけど……。今日、理雄を見たら……とても会いたくなった』 ・・・どきんと心臓が鳴った。 .