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そこにいたのは
確認しようとあたりをみまわした。やはり、滑り台の向こう側から聞こえるみたいだ。
すると……。
「やめろ!!」
今度こそはっきりと聞こえた。急いで滑り台の裏へ周り込んでいく。薄暗くなってはっきり見えなくなっていたけれども、誰かが人を押さえつけていて……これは……。
"──…強姦?"
「何やってるんだっ!」
思わず声を上げる。近づいていくと、押し倒されていたのは……。
「リオ?!」
それはシャツが捲られていて肌も露になっているリオだった。
「お前・・・・!!」
一瞬でアタマに血が上る。俺は襲っている奴の顔も見ずに、リオから引き剥がして思い切り殴った。腹にも顔にも拳を叩きつけた。
「……う…」
相手が蹲って動かなくなっても構わずに更に足で何度も蹴り上げる。
「カズヤ……」
すると、か細く自分を呼ぶ声がした。
振り向くとリオが乱れた服もそのままにしてそっと起き上がりながら俺を呼んでいた。それを見てまたカッと頭に血が上りそうになる。でも……リオは、
「もう止めて……汰一が死んでしまう」
そう言って俺を止めた。
"……汰一?"
それを聞いて俺は蹲っている奴の顔を初めてじっくりみた。
「……汰一ってやつか?コイツが今日の帰りいたヤツか?何で止める?だって、コイツお前をレイプしようとしたじゃないかっ!」
「……そうなんだけど…でも、半分は俺の所為だ」
リオは顔を歪めて苦しそうな表情をした。
「……電話が掛かってきてそれで、声を聞いたら会いたくなって…」
――…それで……。
「だけど、会うべきじゃなかった・・・」
すると転がっていた汰一が俺が蹴った所が響くのかゴホゴホと咳き込みながら言った。
「俺が会おうって言ったんだ」
そして、俺を睨みつける。
「だって、リオがお前なんかと付き合ってるって聞いたから。お前の評判、知ってるよ。リオを遊び相手にしてほしくない……」
コイツは……。誰にそんな事を聞いたんだ?
たしかに、俺は色んなヤツと付き合ってきたけどさ……。
「言ってろよ?誰に聞いたか知らないけど。俺はいつだって本気なんだよっ」
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