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拒否

汰一の襟首を掴んでその顔の間近で言った。 「お前さあ、手ださないでさーただ見ていたいっていうのは、逆に言えは責任を持ちたくないっていうやつ?リオを勝手に理想化しちゃってさ、実際のところ、リオがどう思っていようが自分さえよければいいっていう自己完結だよね。すごいずるい奴だよ」 そう言って汰一の襟首を突き飛ばすように離した。 「俺はさ、好きとか付き合おうとか言った奴にはマジなんだ。遠くで見てるなんてアホな事はしないよ」 "──だからさ" 俺は驚いているリオに近づいて腕をそっと掴んで引き寄せた。 「さんざリオをほっておいたクセに。俺に盗られるからって慌てて来てもダメなんだよ」 そしてその顎を掴んで唇にキスをした。 「…ッ何?」 吃驚して目を見開くリオ。そのリオの瞳を見つめて俺は言った。 「リオの事はマジで大マジで好きなんだよ」 だから。 「リオは俺のものだか……」 その言葉を言い終わらないうちに ――バチンッ!! という音とともに鋭い痛みが俺の右頬に来た。リオが俺を平手打ちにした…みたいだった。 「……お前ら、2人とも勝手だ……」 え?何? 「俺、リオの事助けたじゃん??」 そう。そこは感謝こそされても、打たれるなんて事・・・・。 でも、リオは俺を睨んで言った。 「助けてくれたのはありがとう。感謝してる。だけどお前だって俺を押し倒したよね?」 「あれ?だってさ、それは、・・あれ。止めたじゃん?ねえ?」 「分かっているよ。そんなことっ」 ……何故?リオは分かってるなら何でそんな事言うんだろう? リオは汰一に向かって 「汰一。俺お前の事、無理だから」 と言った。 そして今度は俺にも、 「・・もうこれ以上俺に近づくな・・」 とそんな事を言いやがった。 リオはふらふら立ち上がって歩きはじめた。 「ちょ……リオ。待って、送ってくからっ」 「いい……」 とりつくしまもなく拒否された。 .

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