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Rio side 4 好きになっている

………… …… … ……まるで、水の中を歩いているみたいに、足が重くて、思うように歩けない。 "──ふらふらする……" その場を早く離れたくって、動かない足を必死になって動かして歩く。足が動かないのは、きっと、ショックだったからだ。 "──…汰一が襲ってきた" 突然だったけど、俺は"ソレ"を予感していたのではなかったか?でも、"汰一はそんな事はしない"っていう否定する自分がいた。期待をこめた『確信』。 それは、保証の無い『確信』だった。 だけど、それは違っていたんだ。 汰一は俺を本当にレイプしようとした。そう、半分はされかかってた。触れられた時、すごく嫌だった。キスも、嫌だった。そして、それ以上に怖かった。 "汰一が汰一でない" 俺の知っている汰一じゃない。身体が震えて怖かった。 だけどその時。 カズヤが来た。 カズヤがそこに来た。 まるで分っていたかのように。 "──…嬉しかった" カズヤが俺にキスをいきなりした時。 俺は"嫌"じゃなかったんだ。 すごく、驚いた。だって、俺は汰一にはあんなに嫌だって思ったのに。混乱する。 俺はどうしたいんだ? だから近づくなって言ったんだよ。 ──だから……。 ………… …… … その場から早く離れたくて公園からでようとした。だけどすぐにカズヤが追いかけて来た。 「いいって言ってるじゃないか」 追いかけてくるカズヤに言い放つ。 それをすべてぶち壊して、カズヤは言ったんだ。 「財布をなくしたんだ」 って。 「ナニソレ??」 思わず可笑しくて大笑いしてしまった。カズヤは本当に変なヤツだ。このテンポには付いていけない。 でもそれは、俺を心地よくさせて心の澱を解いていく。 だから、俺からカズヤの手を繋いだ。 "近づくな"なんて言わない。 きっと俺はカズヤが好きになっているんだ。 多分。

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