78 / 134
第77話
「春野さんおはようございます!」
「おう、おはよー」
おはようって言ってももう昼近いけどな。
廊下を歩くとすれ違うやつに挨拶される。俺は別に挨拶とかいいって言ってんのになー。
「春ー」
名前を呼ばれ振り返ると秋がこちらに走って来るのがわかる。
その後から冬もこちらに歩いてきていた。
目の前に来れば「おはよー」と2人に言うと「おはよ。」と返事が帰ってくる。
「そういえば、夏は?春なんか聞いてる?」
「あー、あいつは今日バイト。」
話してるうちに教室に付きいつもの所に座る。
「そうだ!今日、春の家行ってもいい?」
秋の言葉を聞いてはっとした。
そういえば、秋と冬に蒼と住んでること言ってない。
そもそも、蒼の事自体、夏以外は知らない。
「んー…。なんでいきなり俺ん家?」
「今日、従兄弟が来るんだけどめっちゃうるせえの。だから避難!駄目だった?」
「ちょっと待って」
俺は携帯を持って慌てて教室を出て蒼に電話を掛ける。
「はい。」
仕事中だから出るか不安だったけど意外とすぐ蒼は出た。
「あ、蒼?実はさ…」
さっき秋に言われたことを話す。
「ん、分かった。鍵は持ってるだろ?」
「うん。」
「もし、あいつのこと思い出したり辛くなったらいつでも電話かけろ。」
蒼の言葉に心臓が跳ねる。
阪宮の事があってから家には1度も帰っていない。成さん達が片付けてくれたらしいけどあそこに行くのを拒む自分がいた。
「ありがとう。」
「ん、」
電話を切って教室に戻る。
「大丈夫だよ。ちょっと汚いけどいいか?」
「ありがとう!じゃあ皆でお泊まりだねー」
「ん?皆って冬もか?」
「当たり前じゃん!夏は来ないだろうけど」
「まあ、あいつはバイトの鬼だからなー。」
藤龍高校の件があって油断出来ないが俺達は帰ることにした。
時計を見ると既に夕方でこんなに学校に居たのは久々だと気づく。
秋は相変わらず元気で楽しそうに俺の前を歩いているが俺はどこが重い足取りで久しぶりの我が家をむかった。
ともだちにシェアしよう!