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第114話

この数週間春野の様子が変だったことには気づいていた。それに今朝だって。いったいあいつは何を抱えているのだろう。そんな事を考えながら仕事馬へ向かった。 仕事を初めて暫くたった頃少し休憩しようとコーヒーを入れていると幹部室の扉が勢いよく空いた。 若は部屋はいって来て「蒼は居るか?」と声を掛けている。給湯場は入口から刺客になっていて見えないらしい。 「はい。」 給湯場から出て若の前に行く。 「春野からこれを預かってる。」 若から渡されたのは手紙だった。 『蒼へ 蒼がこれを読む頃には俺はきっと空に居ます。2週間前両親から連絡があって俺はアメリカに行くことになりました。黙っていてごめん。蒼に止められたら決心が鈍っちゃうと思って黙って行くことにしました。蒼に出会って俺は色んなことを知りました。蒼と離れるのは辛くて泣いてばかりでこれを書いている今でも蒼に会いたくてたまりません。 自分勝手かも知れないけどお願いがあります。4年だけ待っていて下さい。必ず蒼の所へ帰ります。 それからスーツの内ポケットを見てみて下さい。』 そこまで読んで俺はすぐ自分のスーツの内ポケットを見た。そこには布製の袋に入った指輪とチェーンがあった。 『それが俺と蒼を繋いでいてくれると信じています。蒼好き、大好きです。心から愛してます。 春野』 「本当は春野が飛行機に乗ってから渡すつもりだったんだけどよなんか違う気がして、今から行けばまだ間に合うんだ言ってこいよ。仕事は俺がやっとくから」 状況がまだ把握出来ていないまま若に押されて幹部室を出た。若が言うには11時半の飛行機らしい、今はまだ10時過ぎだから今から急げば間に合うだろう。俺は急いで車に乗り空港まで向かった。

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