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第7話
「ねぇ、僕のペットになる気になった?ミオ」
サクラはミオを見上げ、楽しそうに笑いながら言った。
昨日といい、今日といい、サクラへの印象がコロコロと変わる。
孤高の人なのだと思った、夕陽の下で見たサクラは大人びてどこか妖艶だったのに、太陽の下で見るサクラは年相応の幼さを残した少年だった。
「……冗談は止めて下さい……」
ミオの言葉に器用にサクラの片眉が上がる。楽しげだった表情は不機嫌な顔に変わり、鋭い眼光がミオを見上げた。
「僕が冗談を言っていると?」
「……そうですよ……揶揄わないで下さい……」
剣呑な雰囲気に呑まれそうになりながらも、ミオは必死に言い募る。
その必死さが伝わったからなのか、サクラの表情は不思議な物を見る目に変わった。
「そうか、揶揄っているのかと……本気だよ、ミオ、僕のペットにおなり。可愛がってあげるから」
「……!!」
びっくりして飛び上がったミオを見て、サクラは笑った。うっとりする程美しく、そして愛らしく、初めてサクラを可愛いと思った。思わず見惚れてしまう程に。
ぼうっとサクラを見ていると、サクラが特別棟の方へと視線を向けた。
ミオも同じように見れば、特別棟から何人か生徒達が出て来る所だった。
「……それじゃあ、またね、ミオ」
「……先輩……」
そう言ってサクラは特別棟へと足を向け歩き出した。だが、三歩程進むとくるりと方向転換してまたミオに顔を向けた。
「ミオ、お前は僕の運命の番だ、覚えておくんだよ、僕の可愛いミオ」
「?!」
「じゃあね」
白く小さな手をひらひらと振って、サクラは特別棟へと再び歩き出した。
歩調に合わせるように揺れる一束の黒髪を見つめていたが、やがて特別棟の中に消える。
残されたのはミオだけ、でもその鼻孔にはサクラの残り香がいつまでも居座っていた。
じゃあ、またね、ミオ。
また会えるのだろうか、それならばあの人からかおるあの香りの正体が分かるだろうか……。
ミオは今が部活の最中で、自分は罰則のように外周を走らされていた事を思い出す。
いけない!
サクラとの遣り取りは十分にも満たなかったが、遅れは遅れだ。
それを取り戻す為、先程よりも速度を上げミオは走り出した。
鼻の奥に残る薫りと同じように、ミオの脳裏にも先程見たサクラの笑顔が消える事はこの先当分なかった。
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