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第9話
「こいつは僕のペットだ」
その言葉に驚いたのは、ミオもだが蛇村も同様だった。
目を見開きミオとその背に隠れるサクラを交互に見つめ、思案するような表情を浮かべたがそれは一瞬で、その顔は冷笑へと変わった。
「ははは、ペットね……大型犬が飼いたいというのなら、僕が血統書付きの犬を用意するのに……そんな雑種犬でいいのかい?」
その言葉にムッとしたのはミオだ。
雑種犬とは酷い言われようだ。実際先祖には犬族以外の血も混じっているし、血統書というか高貴な血筋でもないけれど。
「お、オレは雑種じゃありません!!!」
「……吠えるねぇ……」
蛇村は余裕の態度を崩さない。口元に笑みを浮かべてはいるものの、その目は笑っておらずずっとサクラを見つめている。まるで、獲物を狙う捕食者のような目で。
そんな目で見られたら怯えているのではと、ミオは振り返ってサクラを見やるが、怯えているというよりは怒っているようにしか見えない。少しだけ安心して蛇村に向き直る。
「……兎に角、猫目先輩が嫌がっています……あまりしつこくされると警備を呼ばせてもらいますよ」
脅しにもならないだろうが、牽制にはなる……なってくれ、と思いながら言うが無視された。
「サクラ、早く行こう、こんな事は時間の無駄だ」
「嫌だ」
「……君は自分の立場が分かっていないのか?」
「……お前が婚約者というのは親が決めた事だし、逆らうつもりもない、でも嫌なものは嫌だし、それに僕はお前と番になるつもりはないからな」
「……それが逆らっているというんだよ……猫目が開発した抑制剤はうちの協力あっての物だと君だって知らない訳じゃあないだろ、うちが手を引いて困るのは猫目なんだよ、今だって開発中の新薬の研究が進んでいるのだからね」
「……」
「……猫目先輩……」
小さく呼び掛けると、サクラは上を向いて、大丈夫だと言うように頷いてミオの前に出た。
「今日はこれで失礼する、気分が優れない、発情期かも知れないから帰ったら寝るとしよう、行くぞミオ」
「サクラ……!」
「せ、せんぱい?!」
「何が発情期だ、匂いで分かるぞ、そんな嘘……それに今日は上手く隠しているようだが、お前からは僕の番の薫りがする、逃げられると思うなよ」
「……お前の鼻は信用ならんな」
「サクラ!」
「失礼、ほら、ぼさっとしない、行くぞミオ」
「は、はい……!」
蛇村の車の回りに止めてある車の運転手や、生徒逹が何事かとサクラ逹を見ている。その視線に気付いたからか、蛇村は大人しく引き下がった。
「気分が優れないというなら真っ直ぐ帰るんだな、ペットの散歩は程々にしておけ」
捨て台詞を吐いて黒塗りの車に乗り込むと、音もなく発車しあっという間に見えなくなってしまった。
呆気に取られていたミオのブレザーの裾をサクラが引っ張る。
「何をしている、僕を家まで送っていくんだ」
「え?!あ、あの、先輩気分が優れないって……体調が悪いのならお迎えを呼んだ方がいいのでは……」
「……真に受けたのか……」
「え?!」
「嘘も方便というだろう、ほら、行くぞ、今だけはペットから護衛に格上げしてやる」
「……」
「早く来い」
「……はい」
護衛が格上げなのかは分からないが、このままサクラを一人で帰宅させるのはまずいと思う。
こっそりとため息をついて、ミオはサクラの隣に並び正門へと向かい歩き始めた。
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