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第10話
「おうちはどこなんですか?」
聞けば電車で二駅先にある街の名前を言われた。それならば送り届けて戻っても寮の門限には間に合う。
「何か予定があったのか?」
「いえ、寮の門限に間に合えばいいので……今日は部活も休みですし」
「そうか」
正門を出ると真っ直ぐに伸びた通りの両側には桃園学園の中学校や大学、他にもグラウンド、体育館などが校舎とは別に見えてくる。
駅までが桃園学園の敷地、と言っても過言ではない程にその土地は広大だ。都内でも区外とは言えその全貌を眺めるのは、航空写真でも見ないと判明しない程に広い。
今日は部活は休み。だけどトレーニングはしようと思っていたので、戻ってきたら軽く走ってバッティング練習でもしよう。
そんな事を考えていたら、背負っているリュックをバシバシと叩かれた。
「速い!」
「はい?」
「もっとゆっくり歩け、置いていくつもりか!」
そんなに早く歩いているつもりはなかったが、これは歩幅の問題か。身長差も20センチ以上あるのだ、申し訳なく思いミオは素直に謝った。
「すみません……」
「……護衛だと言っただろ」
「あ、はい……えっと……」
「護衛もなく外に出るのは久しぶりだ、最近は誘拐もなかったからな、まぁ問題ないとは思うが……」
「誘拐?!」
「子供の頃からな、でも未遂だ、完全に連れ去られた事はない、これがあるからな」
驚くミオに向かい、サクラの白い指先が襟元から覗く赤い首輪をそっと撫でる。
歩く度に揺れる小振りのダイヤモンドを見るだけでも、それが高価な物だと分かる。
だが、それがあるからなんだと言うのだろう。GPS内蔵なのだろうか。
ミオは疑問のままに首を傾げた。その表情を面白そうに見上げてサクラは小さく笑った。花が咲くような笑みに釘付けになる。
「GPSは勿論だが、これに付いている救難ボタンを押せば警備会社に即連絡が入り、警備員が駆けつける、それに先んじてドローンで追跡もする、なので誘拐が成功した試はない」
海外だった場合はドローン搭載の銃撃システムを使う事もある。等と続き、ミオはまじまじとサクラの首輪を見つめた。
「それにこれは万が一発情期になった時に備え、フェロモンに反応し内側から抑制剤が打てるようにしてある」
「す、凄いですね……」
「猫目が開発した僕専用の特別品だからな、まぁそれ以外にも機能はあるが……でもこれがあれば安心という訳でもない、慢心しないで送り届けろよ」
「は、はい!」
送り届ける事に納得している訳ではない、だけど一人で帰すのは心配だ。家に連絡を入れれば迎えなど直ぐにやって来る筈なのにサクラはそれをしない。
一緒にいたいと思ってくれていると言う事なのだろうか?
単なる気紛れだろう、とは思うけど。
それでもミオは自分の心が高揚し、喜んでいるのを感じていた。少しでもこの人と一緒にいたいと思っていると。
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