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第15話
翌日はサクラに会う事もなく1日が終わった。でもそれはいつもの日常。元々同じ高校、という位しか接点はない。
最近話をするようになったが、それまでは校内で時々見掛ける綺麗な先輩位の認識だったのだ。
単なるサクラの気紛れであれば、もう話し掛けられる事はないのかもしれない。
ペットだとか運命の番だとか、揶揄われただけ……未だにそんな風に思う。
だけど、もしかしたら本心で言っているのでは……?そう思うのは単なる願望だろうか。
時間だけが過ぎ、会わないまま週末になった。
土日は学校は休みだが部活動はある。
ミオはいつものように野球部の仲間と寮を出て学校へ向かっていた。
「犬塚君」
校門を入った所で突然名前を呼ばれ、ミオは声の方へ顔を向けた。そこに立っていたのは名前だけは知っている同級生だった。
「……猫目君……?」
制服姿の猫目ツバキは小走りに近付いて来た。
兄と同じように白い肌と艶のある黒髪だが、瞳は黄色味の強い緑色、そしてサクラよりも長身である。決定的に違うのはバース性だ。オメガのサクラに対し、弟のツバキはアルファであった。
話すのは今日が初めて、ミオは何故話掛けられたのか分からず首を傾げた。
「犬塚君、突然で申し訳ないのだが一緒に来てくれないか?」
「……え?」
「緊急なんだ」
「え?いや、でもオレこれから部活があって……」
「猫目どうしたんだよ?オレ達部活があるんだけど」
鷲尾はツバキと同じクラスのようで、困惑しているミオを見かね助け船を出してくれた。だが、ツバキの意志は固くミオの腕を取ると校門へと歩き出した。
「鷲尾君、すまない、犬塚君を借りていくよ」
「え?だから、オレ部活が……」
「兄さんの一大事だ」
「……え?」
「犬塚、猫目」
追いかけて来た鷲尾に向かい、ミオは表情を改めた。その顔にもう迷いはなかった。
「……鷲尾、ごめん、監督に今日部活休むって言っておいてくれ!」
「は?おい……」
「……猫目君……先輩の一大事って……」
「話は後だ、まずは至急着替えて来てくれ、車を呼んであるからその中で話そう……」
「……うん……」
何が何だか分からないまま、ミオは走って寮へ戻り急いでジャージから着替えた。
ツバキが制服だったので、同じでいいかと思い制服を着て直ぐに寮を出る。
寮の前には数日前に見たのと同じような黒塗りの高級車が止まっていた。
ミオが近付くと後部座席のドアが自動で開く。
「さぁ、乗って」
「……」
躊躇いながらもツバキの隣へ乗り込むと、車は静かに走り出した。
運転手は前回見た異国を思わせる肌の執事ではなく、初老の男だった。
「……あの、先輩の一大事って言うのは……」
「兄さんは婚約者と出掛けているんだ」
「……はぁ……そうなんですか……」
「はぁ、とは何だい、何故そんな腑抜けた返事が出来るんだ?」
「腑抜けたって……えっと……その、婚約者って言うのはもしかして……」
「蛇村製薬の嫡男さ」
「……あぁ……」
やはりそうか、とこの間見た男の顔を思い浮かべる。
あの男とサクラは婚約しているのだから、二人で出掛ける事位あるだろう。
そのどこが一大事なのだろう、今までだってあったのではないだろうか?
「君、この間蛇村と兄さんの間に入ったじゃないか、このままだと兄さんが危ないんだ」
「危ない?」
「今晩は帰って来ない予定だそうだ」
「えーと……それは……その、それは先輩とご両親が納得しているのであれば仕方ない事なんじゃ……」
「君はそれでいいのか?」
「……」
「今、この瞬間にも蛇村の魔の手に落ちているかも知れないんだよ?!」
「……ちょっと、待って……何で……オレにそんな事を言うの……?」
ツバキは盛大に溜息を吐いた。
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