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第17話

「意外だな、お前がこんな無邪気な所に連れてくるとは」 「……君は僕を何だと思っているんだ……」  柔らかい秋の陽光は絶好の行楽日和だ。  蛇村ニシキは冷血蛇男、とも言えずサクラは周囲を見回す事で誤魔化した。  先日断ったデートの代わりなので観劇に連れて行かれると思っていたが、連れてこられたのは別の場所だった。  郊外にあるテーマパークは広大な敷地が、4つのエリアに区切られている。この中にある飲食店や売店の一部には猫目も出資していた。  休日とあって乗り物などのアトラクションには長大な列が出来ている。  サクラ達はのんびりとパーク内を散策している。買ってやると言われ勝手にポップコーンのバケットを首から提げられ、デートにしては雰囲気の悪い二人は当てもなく歩いた。 「何か乗るかい?」 「……」  興味がない訳ではないが、蛇村と一緒だと気分が乗らない。サクラは終始不機嫌な顔を作っていた。  だが、そんなサクラにはお構い無しといった様子で蛇村は一人パークを楽しんでいた。  普段のスーツ姿と違い、カジュアルな服装という事もあり社会人というより大学生位に見える。  キャメル色のカーディガンに黒をメインとしたデザインシャツ、濃紺のスキニーパンツにスニーカーという蛇村は雰囲気まで柔らかく見える。  更に、柔和な表情を浮かべる彼はまるで知らない人物のようで戸惑う。普段の高慢な態度でいられた方が割り切って付き合えるというのに。 「小さい頃は連れてきて貰えなくてね……憧れたものだ……だからと言って大人になってから来るというのも中々機会がなくてね」  独り言のような呟きに顔を上げれば、辺りの家族連れを柔らかい視線で見渡していた。  その顔は純粋にパークを楽しんでいる者の顔で、サクラも少しは彼に付き合ってもいいかと思い始めた。 「混んでいるからパスを取っておいた方がいい……そうすればあまり待たずに乗れる」  人気のアトラクションには待ち時間緩和の為、時間毎に優先的に入れるパスが発行されている。サクラはそれを説明すると蛇村は感心したように頷いた。 「ほぅ、そういうものがあるのかい、じゃあ早速取りに行こう」 「あっちのがいい」 「あぁ」  ジェットコースターのある方角に指を指し示せば、蛇村は素直にサクラに続いた。本当に調子が狂う。 「ところで」  先程までの楽しそうな顔から一転、蛇村は表情を曇らせた。 「彼は何なのかね?」 「あぁ……」  彼、と呼び後を振り返るとサクラ達から二メートル程後方には執事の兵頭コテツがいた。テーマパークとは程遠いような黒のスーツ姿は浮いてる。 「僕の執事だ」 「執事が何故着いてくるのだね?」 「主人に付き添うのは当然だろう」 「護衛が着くのは分かるが、あんなに目立って意味があるのかい?」 「目立っているという事は不審者への牽制になるだろう、気にする事はない、いつもの事だ」 「……いつもねぇ……」  不服そうではあるが、万が一サクラが誘拐でもされたらと思えば蛇村も強く反対は出来なかった。後方から着いてくるだけで、二人の行動に口を出したりはしないから気にしなければいいだけの事だ。 「あれに乗りたい」  サクラが指を指したのは鉱山を模した山々の中を走るジェットコースターだ。 「構わないよ」 「じゃあパスを取ってこよう」  二人はジェットコースターの入り口近くにあるパスの発券機に近付いて行く。  コテツはその様子を見ているだけで、動こうとはしない。  時折スマホでどこかに連絡をしているのがサクラから見て取れたが、コテツは終始二人の後を着いてくるだけだった。

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