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第20話
ソフトクリームを食べ終わり暫くすると、船が到着した。豪華客船を模した船から続々と人が降りてくる。
年齢も性別も種族な様々な人達、楽しげな笑い声が聞こえてくる人波の中にサクラがいないか探す。
だが、最後の家族連れが降り、次の乗客が乗り込んでもサクラの姿はなかった。
「……次の船かな……?」
パンフレットを見ると船は半周するものと、一周するものの二隻あるらしい。
先程到着したのがどちらの船か分からないが、待てばもう一隻くるのは間違いない。
「もう少し待ちましょうか……」
「そうだね……」
昼時という事もあり、辺りからは美味しそうな匂いが漂ってくる。それに混じり甘そうな香りも。
これはキャラメルだろうか、無意識にクンクンと嗅いでいたようで、ツバキはそんなミオを面白そうに見つめていた。
「ポップコーンでも買ってくるか……」
「えっ?!」
「小腹が空いたね、コテツ」
「はい」
「頼むよ」
「……よろしいので?」
「あぁ、僕も少し食べたい」
「いえ……お時間は……」
「まだ大丈夫だろう、それに今ならポップコーンの列も然程混んでいないようだし」
直ぐ側にあるポップコーンの屋台に並んでいる客は三人。慣れた店員は手早くバケットや箱にポップコーンを詰め並ぶ客に手渡している、あれなら10分とかからず順番が回ってきそうだ。
ミオもつい期待を込めコテツを見つめた。
腹を空かした二匹の子猫と子犬の眼差しにコテツは観念したように頷いた。
「……分かりました……行ってまいります」
「頼むよ」
「はい」
「すみません、ありがとうございます」
言った後で自分が行けばよかったかと思ったが、コテツは列に並んでしまった。
サクラは船上で風景を楽しんでいるのだろうか。自分を見たらどう思うだろうか。あと少しで会えると思うと急に緊張感が増してくる。
「君は兄さんをどう想っているの?」
「は、はい?!」
「兄さんを愛しているのか?」
「な、何を言って……?!」
見つめてくるツバキの真意は分からないが、探るような目はミオを試しているようにも思える。
返答次第ではただではおかない、そんな雰囲気が読み取れミオは固唾を呑んだ。
愛してる?
きっとミオのサクラへの想いはそんなはっきりと言葉に出来るものではない。
好意的な感情は勿論あるが、それが単なる憧憬なのか恋慕なのか自分でも理解出来ない。
ここにいるのだって、自分の意志ではあるものの連れてこられたからだ。それでもサクラの危機と聞けば逃げるつもりはない。
だけど、ミオに出来る事なんてあるのだろうか。
そんな迷いがツバキに伝わったのか、彼は視線を外すとため息を吐いた。
「……」
二人の間に重い沈黙が落ちる。パークの雰囲気と真逆な居心地の悪さはコテツが戻ってきた事で緩和された。
「お待たせしました、とうぞ……お二人で分けてくださいね、時間も限られていることですし」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
ミオはハロウィンの仮装をしたバァニーとピンキーの絵柄の入った縦長の箱を受け取ると、まずツバキに差し出した。
ポップコーンの山の頂きをツバキの白い指が摘む。キャラメルの甘い匂いが鼻を擽り、ミオの頬は自然に緩んだ。
「美味しい……塩キャラメルか……美味しいよ、犬塚君」
「いただきます」
サクリとした軽い食感とキャラメルの甘味、そして後から追いかけてくる塩味はクセになる味わいで、ツバキも気に入ったのか一つ、二つと口に入れている。
「コテツも食べる?」
「いえ……お二人でどうぞ」
美味しそうに食べる高校生二人を見つめるコテツの眼差しは完全に保護者だ。慈しむように見ていたが、腕時計に視線を落とすとスーツの胸ポケットにしまっていたスマホを取り出した。
「……ツバキ様」
「ん?」
お腹が減っていたのか、味が気に入ったからか二人で食べていた事もありポップコーンの残りは三分の一程になっていた。
「……サクラ様が移動されてます」
「船でだろう?」
「いえ、どうやら既に地上へ降りているようで……」
「えっ?!どこにいると言うんだい?!」
サクラの首輪にはGPSが搭載されている、位置の確認はスマホで出来るようだ。
ならばここで待つにしても先程の船にサクラが乗っていたか、スマホで確認出来たのではないか?と疑問に思ったのも一瞬、次のコテツの言葉でその疑問は吹き飛んだ。
「……猫目が出資しているパーク内のホテルに……サクラ様はいるようです」
「なっ……?!」
「えっ……?!」
慌てて立ち上がったミオとツバキは顔を見合わせると、確認の為コテツの持っているスマホの画面を食い入るように見つめた。
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