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第21話

 何がどうなっているのかミオにはまだ理解出来ていないが、兎に角足を動かした。  ホテルにいる、と言われ場所を教えられるとすぐさま三人は走り出した。  パーク内にあるホテルは一つだけ。入口付近に建っている洋館風の白い豪奢なホテルだ。  パークの奥の方まで行っていたので戻るのには時間が掛かる。いつからホテルにいるのかは分からないが、急ごうとツバキに言われるままミオは走り出した。  犬族のミオの脚力に猫族のツバキは付いて来れないようで、途中先に行ってほしいと息を切らしながらリタイヤしてしまったのだが、先頭を走るコテツは顔色一つ変えずに走り続けている。  しかも、人混みを器用にすり抜け時折ミオが付いて来ているか確認してくる余裕まである。  コテツは猫は猫でも大型の猫族なのかもしれない。確かめる事は出来ないが、ミオはコテツの背中を追い掛けながら脚力の強さを感じていた。  ホテルが見えてきた。入口付近にあるアーケード街の外側に建つ白い洋館、パークに滞在する者のみ泊まれるホテルだ。  婚約者同士がホテルに入る事は法に触れる事ではないだろう。いや、未成年であるミオに何かあれば法に違反するのか?本人の同意があれば違うのか?  そんな事は今はどうでもいい。問題なのは二人がホテルにいる事だ。  でも、サクラの同意があるのなら自分が行った所で無駄足なのでは?  助けるつもりで走って来たが、本当にサクラは助けてほしいのか?  だって猫目が出資しているホテルと聞いた。それならサクラが騒げば自分が行かずとも救出される筈だ、首輪だってある。  ミオの疑惑や不安はホテルが近付くにつれ大きく膨らみ、遂には足を止めてしまった。 「はぁ……はぁ……」  全速力で駆けて来た心臓が悲鳴を上げている。  崩れ落ちそうになる膝を鼓舞するように、腿に手を置き息を整える。  だけど、一度湧き上がった疑念は早々消し去れるものではない。  まるで最終回裏、逆転ホームランを浴びたように虚無感が全身を覆う。 「犬塚君」  見上げるとコテツが真剣な眼差しでミオを見下ろしていた。  荒い息遣いのミオと違い、呼吸の乱れすら見えないコテツ。鍛え方が違うのか、それともこれは大人と子供の差なのか。  金色の相貌には強い意思が見える。それはサクラに対する忠誠心だ。必ず助けるという強固な意志に、ミオは勇気を奮い立たせた。 「……すみません、行きましょう」  きっと行かなければ後悔する。  ミオの足を動かすのはその一念だった。  何を言われてもいい、勘違いでもいい。  後悔したくない。そして。  サクラを蛇村に奪われたくない、例え婚約者だとしても。  土壇場で芽生えたサクラへの想いを胸に、ミオとコテツはホテルのエントランスへ入っていった。

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