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第22話
少しだけ待っていて下さい、そう言われホテルのロビーのソファーで待っているミオはまるで借りてきた猫のように縮こまっていた。
ふかふかのソファーは尻が深く沈み込み心地よいが、磨かれた大理石の床はピカピカ過ぎてミオには眩しいもののように思える程だ。
勇気を奮い起こしたというのに、妙な待機時間のせいでミオの決心は枯れた花のように萎んでしまった。
ジロジロと見られる訳ではないないが、制服姿の高校生は周りから浮いて見える。修学旅行などで泊まれるようなホテルではないから、冷やかしと勘違いされないかと落ち着かない。
深く沈むソファーは一度座ったら立ち上がれなくなりそうな座り心地だが、疲れた体を優しく包んでくれるようだ。だから立ち上がれなくなるのか、ミオは妙に納得した。
「お待たせしました」
数分しか持っていなかったというのに、永遠に感じる位居心地が悪かった。観光で来ていたらもっと浮き立つような気持ちで大理石の床の上に立てていただろうに。そう思えば残念だが仕方ない。
ミオは気持ちを切り替えるように、勢いよく立ち上がった。
「行きましょうか」
「はい」
コテツの目はまるで覚悟は決まったかと聞いているような色をしている。曖昧なまま頷いてはいけない、ミオは固い決心を再び心の中でしてからコテツの隣に並びエレベーターホールへと向かった。
エレベーターは二基あり、丁度右側の扉が開いた所だった。家族連れが降りるのを待ち、二人は箱に乗り込んだ。
暖かな暖色系の照明のエレベーターに入ると、コテツは最上階のボタンを押した。
高層ビルのような建物ではないので、最上階といっても数字の6を押すだけだ。なので、直に目的階へ着いてしまった。
縦には高くないが横にはそこそこ広い筈の建物だが、扉の数は少なかった。運動靴の爪先が沈むようなカーペットを進み、一番奥の部屋の前でコテツは止まった。
重厚な作りの木製のドアには真鍮のドアノブが付いている。カードキーではなく、凝った作りの鍵でドアを開けるようだ。
いきなりドアを開けて平気なのだろうか?という疑問はあったが、コテツは躊躇う様子もなく鍵を差し込みドアを開けた。
中はオフホワイトの壁紙の明るい室内だ。蔦模様の壁紙とクラシカルな調度品に囲まれたリビングの奥には、白いドアが付いている。
室内をよく観察する間もなく、コテツはそのドアへと進む。奥にサクラがいる事を確信しているような足取りだ。
コテツは丸いドアノブを掴むと一度ミオを振り返った。今度は躊躇う事なく、ミオは頷く。
それを見届け、ドアノブを回し二人は部屋の中へと入った。
そこはベッドルームだった。
大きなベッド、キングサイズだろうか。壁紙と同じ白いカバーの掛けられたベッドの上には蛇村が驚いた顔でこちらを凝視していた。
そして、彼に組み敷かれたようにベッドに横たわるのは探し求めていたサクラだ。
「なっ……?!お前達どうして……」
「何をしているんだ……!!!」
自分でもびっくりする程の大声が出た。怒気を孕んだ声はまるで辺りを威嚇するようで、部屋の空気が一気に緊張に包まれた。
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