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第29話
パーク内ならどこでも見られるし、特に穴場的な場所を知っている訳ではなかった。だからミオはなるべく見晴らしの良さそうな場所にサクラを案内した。
日中は暑い位だったが、外にいたら夜は肌寒さを感じる。サクラは寒くないだろうかと、ちらりと見れば、どうした?といった顔で見つめ返された。
「寒くないですか……?」
「ん?あぁ……大丈夫だ、お前の方が薄着じゃないか?」
「オレは大丈夫です、丁度いい位です」
「そうか」
花火の時間まではあと30分はあるだろう。
二人はゆっくりとした歩調でハロウィンの装飾に彩られた街頭の下を歩いた。
おばけの顔にくり抜かれたかぼちゃがあちこちにあり、ハロウィン仕様に飾られたパーク内は見ているだけで楽しい。オレンジ色の街灯に灯された装飾たちはロマンチックに見えた。
昼間は余裕がなかったが、今は手を繋いで歩いていても何故か気持ちが落ち着いている。パークへ到着した時の自分からは考えられない程だ。
「先輩、何か飲み物、買いませんか?」
「そうだな……」
丁度見えてきたハロウィンの小物をあしらった売店に二人して向かう。腹は減っていないので、二人共ドリンクだけの購入にした。
ミオはホットココアを、サクラはホットティーを。熱い飲み物なので歩きながら飲むのは適さない。
花火が見えそうな場所まで行きベンチを探す。
小高い丘にあるベンチはほぼ埋まっていたが、隅の方は空いていた。
花火が建物に隠れて見えない場所だからだろう、周りに人気はない。花火が始まったら移動すればいい、そう思いミオは奥のベンチを指さした。
「あそこ、座りませんか?」
コクリとサクラが頷く。
横並びで座り、買ってきたホットドリンクを二人して飲む。そこまで寒くはないと思っていたが、喉を落ち体を温めてくれるホットココアに自然とため息が漏れる。
「はぁ……」
「……疲れたか?」
「そうじゃないんですけど……なんか……1日で色々ありすぎたから……座ったらホッとしちゃって……」
「そうだな……濃い1日になったな」
サクラが穏やかに笑う。その笑顔は儚げで、すぐ隣にいるのに気泡のように消えてなくなってしまうのではないか、ミオにはそう思えてならなかった。
それはここへ来てからも二人の関係がただの先輩と後輩のままだからだろう。決定的に変わったというのに、その名称に名前はまだない。
明日になれば今日起きた事は夢と片付けられてしまってもおかしくない。濃い体験をしたというのに、現実味の薄い一日だったと思う。
だからこそ、もう少し二人でいたいと思ったのだ。
「先輩オレの気持を聞いてもらってもいいですか?」
隣に座るサクラに静かに語りかける。
サクラはミオの目を真っ直ぐと見上げ、頷いた。
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