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第39話
「そんな顔をするな」
どんな顔をしているだろう。そう言われても表情を改める事ができない。
「僕の方が年上なのに……お前が会いに来てくれないと勝手に拗ねた……この一週間は留学の準備などでバタバタしていて学校も休みにする事も多くお前が会いに来ても会える機会は少なかったのに……」
「いえ、オレも……ごめんなさい……会いたかった……会いたかったんですけど……勇気が……出なくて……会って何を話せばいいのか分からなくて……でも、やっぱりこうやって会えて嬉しい……先輩……」
「ん?」
「先輩のこと……だいすきです……」
「……ミオ……」
名前と同じだ、満開のサクラみたいな美しい笑顔。嬉しそうに笑うサクラにミオも満面の笑みで応えた。
「やっと言えた……」
「本当にな、遅いぞ」
「すみません……」
「あと、これ……手を出して、ミオ」
「?」
言われるままに、ミオは右手を差し出した。サクラはミオの手首を取り、くるりと手の平を上にするとそこに何かを落とした。
「?!」
手の平に転がったのは、小振りのダイヤ。サクラの首元に視線を移せば見慣れた物がそこにはなかった。
「……持っていてくれ、コテツは留学に付いてくるから頼めないけど、ここへは柏木と来てるだろ?あとでチェーンを付けてネックレスにしてもらってくれ、多分コテツから話がいっている筈だ」
「え?あの……」
という事は先程二人で話している間にダイヤを外したのだろうか。空港で再会した時は赤い首輪は小さく光っていたから。
「お前が僕の物だって証明になる」
「でも……」
「オレはなにも……」
「お前が噛まなかったんだろ……」
「あっ!」
「……僕は噛めないから……その代わりだ」
「……ありがとうございます」
右手で握り込み、更に左手を添える。まるで祈りのようなポーズだ。
「失くさないようにな」
「はい!」
「……そうだ、その前に連絡先を……ミオ、スマホは持っているか?」
「はい」
制服のズボンのポケットからスマホを取り出し、連絡先を交換する。電話番号、メールアドレル、メッセージアプリの連絡先など。今更過ぎるがこれで安心だ。
「連絡します……あ、時差……」
「8時間ある」
今が大体14時なのでロンドンは朝の6時頃という事か。こちらが夜の場合ロンドンは昼。電話の場合は掛ける時間を考えた方がいいだろう。
「といっても一月だ、帰ったら色々話そう」
「はっ、はい!……ひとつき……なんですね!」
「それも知らないのか……少しは校内の事に興味を持て……」
「……はい」
呆れた顔はまた直ぐに笑顔に戻る。釣られたようにミオも笑顔を作る。
だけど、これが今生の別れではないというのに、離れ難い気持ちが邪魔をして上手く笑えない。
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