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第3話
「おはようございます・・・あの、すみませんでした」
次の日、シフトインの時間より早めに店に行き事務所でパソコンを叩いている店長に挨拶をする。
「お、はるくん。もう体調大丈夫?」
人の良い柔らかな笑顔に、春は胸が痛んだ。きっとたくさん迷惑をかけた。
それでなくてもこの店は慢性的に人手不足だ。いつも店長がシフト調整に頭を痛めていることを春は知っている。
「・・・はい。今回もご迷惑おかけして本当にすみません」
「いいよいいよ。はるくんは普段シフト協力ハンパないんだからさ。また今日からバリバリ頼むよ」
それは当然だ。
発情期のたびに迷惑をかけるのだから、春は普段から急なシフト変更も絶対に断らないように心掛けていた。
くわえタバコに火をつけ再びパソコンに向かった店長にペコリと頭を下げ、ユニフォームに着替えようとロッカールームのドアに手をかける。
「それと宮田さんにお礼言っておいてね。今回彼女がフォローしてくれたから」
振り返ると店長はパソコンとにらめっこしたままだった。
「はい。すぐ伝えます」
それだけ言うと春は急いでロッカールームに入り、ドキドキする胸を両手で押さえた。
大丈夫、大丈夫。絶対にバレやしない。
ロッカーを開け、小さな鏡に映った自分の顔に喝を入れる。
この好意は誰にもバレてはいけない。
鏡の中の自分に言い聞かせる。
Ωである春は、これまで人の優しさに触れる機会が極端に少なかった。腫れ物に触るような、憐むような、できれば面倒くさいΩなんかと関わりたくないであろう相手の感情はそれとなく春自身に伝わり、その度に悲しくなる。
だから少し優しくされただけで、親身になってくれただけで春は店長に好意を持った。それはきっと、店長が自分に向けてくれる好意とはまた少し違う感情。。。
あまりにも単純な初恋だった。
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