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第4話

シフトインすると、春はすぐに客席に向かう。 そこで宮田さんがオープン前の清掃をしているはずだ。 しかし客席を見回しても宮田さんの姿は見当たらない。 「・・・どうしたのかな」 ふと外に目をやると駐車場で宮田さんが誰かと話している。 しばらく様子を眺めていたが、何やらその男の人と言い合いをしているようで宮田さんの表情が穏やかではなかった。 「ヤバイ、のかな・・・」 春は急いで外に出た。 「あの、宮田さん。どうしましたか」 本来であれば休みのお礼を言うのが先だがこの状況はそれどころではない様子だ。 「あ、はるくん。この方がね・・・」 ふとその人の方に顔を向ける。 ・・・ヤバイ。絶対に反社会勢力の関係者だ。止まっている車もそれっぽい。 春は咄嗟に目を逸らした。 「この方が先週ドライブスルーで買ったセットの中にポテトが入ってなかったって言うのよ」 宮田さんは明らかに疑っている。 「おい、疑ってんのかコラ」 「疑ってはいませんが、お客様。なぜすぐにご連絡くださらなかったのですか?」 スーツをだらしなく着崩して息巻く反社会勢力関係者に怯みながらも、春は毅然と立ち振る舞う。 「こっちにはこっちの都合があんだよにいちゃん。すぐに連絡しないからって・・・」 そこまで言った男の表情がガラッと変わった。 「ふーん。にいちゃん、Ωかよ。えらくいい匂い振りまいてんじゃねーか」 「え・・・」 春は驚いて宮田さんを見る。 彼女は首を横にブンブンと降っていた。 発情期はもう終わっている。 なのになんで・・・。 「ま、ポテトの件はなかったことにしてやるよ」 ニヤけた嫌な笑い方をする男が言葉を続ける。 「あ、ありがとうございます」 咄嗟にお礼を言うと、宮田さんが春の袖をたしなめるように引っ張った。 「改めて注文する。この住所に例のセットを5セット持って来い」 男が叩きつけるように春に名刺を投げつけた。 「・・・藤ヶ谷ビルディング?八幡、様?」 春の手元を覗き込んだ宮田さんは「嘘でしょ?」と小さな声で呟いた。幸い男には聞かれなかったようだ。 「いいか、昼までに届けろよ。先払いだ」 「はい・・・・」 一万円札を受け取ると、男は黒塗りのあからさまにヤバイ車に乗り込み去っていった。

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