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第6話

つい最近の調査で、国民全体に占めるαの割合は約2割だってネットニュースでやっていた。βは7割、Ωに至っては1割らしい。 普通に生活していたらなかなかαに出会う機会はないはずなのだが、春は運がいいのか悪いのか結構な確率でαに遭遇していた。 突然掴みかかられて、襲われそうになった事は一度や二度ではない。 幸い大事に至らずに済んできたが、襲ってきたαは突き出された警察でみな一様に同じ言葉を口にした。 「あいつに誘われたんだ。自分はその気もなかったのに、あのΩに誘惑されたんだ」 ・・・と。 その度に春は医療施設に強制的に保護されて、アレコレと抑制剤を強要された。Ωの保護施設への入所も進められたがそれだけは頑なに拒否をした。 保護施設なんて聞こえはいいが、実のところは自由もなく勝手にαの番を決められてしまう収容所みたいなもんだと聞いたことがある。 いくら多様化が認められる社会になったとはいえ、Ωに対する人々の認識は昔から変わらない。 善良な市民を惑わす可能性のある、関わると厄介な性別・・・。 だからΩ性の進学や就職はあまり歓迎されず未だ社会進出は進まなかった。 そうこうするうちにお昼のピークタイムになり、そろそろ例の男のところへデリバリーする時間になる。 今日は店内の客はまばらだし、ドライブスルーも暇だ。 暇だからこそ、春は余計なことをいろいろ考えてしまい更に緊張した。 「本当に大丈夫?私が行って来ようか?」 セットパッキングしながら宮田さんが心配そうに声をかける。 「大丈夫ですよ。休み中宮田さんに散々迷惑おかけしたんですから・・・」 「でも・・・なんだったら店長に行かせようよ。私から言ってあげるよ?」 「いや、本当に大丈夫ですから!すぐ帰ってきますからそれまでカウンター一人にしちゃいますけどお願いしますね」 綺麗に詰めた商品を両手に持って、宮田さんに心配かけまいと春は精一杯の笑顔を向けて店を出た。 本当はとても緊張していたが自分だってこの店のスタッフなのだ、これ以上迷惑はかけたくない・・・、その一心で己を奮い立たせて約束の藤ヶ谷ビルディングに向かう。

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