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第11話

その後も店は忙しくなることなく、ただ時間だけが過ぎていった。 宮田さんはその後もカウンター内を掃除しながらドラマの話を一方的に喋り続け、15時に上がり帰っていった。 店長も面接から戻らず、結局誰にも相談することなく春はシフトアウトの時間を迎えてしまう。 春はまだ宮田さんの言葉にモヤモヤしていた。 それがなんなのか理由はよくわからないのだけれど、まるで喉に刺さった魚の骨のようにチクチクとするのだ・・・。 憂鬱な気持ちのまま、春は藤ヶ谷ビルディングに向かう。 すっぽかす、なんて選択肢は最初からなかった。 考えてみたら、カバンの中の財布には少しのお金しか入っていない。 もし高額なクリーニング代を請求されたらどうしようか。恥を偲んで分割払いをお願いしなくては・・・。今月は病院の受診もあり、全く余裕がなかった。 あれこれ思いを巡らせているうちに、ビルの入り口に到着してしまった。 昼間見上げた時も感じたが、洗練されたお洒落な外観にあまりにも不釣り合いな自分。 こんなところで働ける人って、一体どんな人間なんだよ・・・。 春は情けない気持ちで入り口のガラスに映る自分の姿を眺める。 Ω性の男性によくある特徴の貧弱な体格。 洗い晒しのTシャツに、履かないからと知り合いに譲ってもらったカーゴパンツ。 それに、もう何年使っているかわからない年季の入ったリュックサック。 こんなことになるなら、もう少しマシな物を着てくればよかった・・・と思ったところで苦笑した。 ・・・これが一番マシだった。 スマホを取り出し時間を確認すると、17時をだいぶ過ぎてしまっている。 いつまでも悩んでいても仕方ない。 とにかく誠心誠意謝罪するしかないのだから。 春は意を決して名刺に書かれた番号に電話をした。 緊張しながらスマホを耳に当てると、、5回目のコールで繋がった。

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