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第4話
ちょっと残念そうにカウンターの中でグラスを拭いている圭吾をちらりと見る。
オレとは真逆の白い肌が華奢な体に良く似合っていた。
乱暴な言葉遣いをする時もあったけれど、その立居振舞の丁寧さは育ちの良さを滲ませる。
深くは聞いたことはなかったけれど、家を飛び出して苦学生をやっていると言っていた。
「……店長のイジワル……」
薄めの唇をつんと尖らして文句を言う。
「前言ってた彼氏はどうしたの?あんなにラブラブなんですって言ってたでしょ?」
横に立ち、同じようにグラスを拭き始めると彼はふと手を止めた。
「……」
尖った唇が尚も尖る。
むしゃぶりつきたい気持ちと闘いながら視線をやると、圭吾の目にはうっすらと水の幕が張っていた。
「……あの、俺って鬱陶しいですかね」
「そう言われたの?」
「……はい。あ、いや 言われたって言うか……あんま長続きしないから、俺って鬱陶しい奴なのかなって」
しょげる彼に、さっきの客のように声を掛けたかったけれど、店内恋愛禁止と言い出した本人である以上言い出せず、ただ慰める役に徹した。
当時からバイトをしていた壱はそんなオレを見て、くすくすと笑ってはいたが傍観を決め込んでいるようだった。
ある時、圭吾が酷く落ち込んだ時期があった。
今までのフラれた時の行動から、また自暴自棄的に体だけの関係を求めようとするのかと思いきや、ただただ荒む彼の姿に、
『ああ、本気だったのだな……』
そう気付いた。
いつもの、寂しいから擦り寄るのではなく、好きだから傍に居たい相手にフラれてしまったのだと分かった。
その隙間を埋める自信があった訳じゃなかった。
あった訳ではなかったが、それでも圭吾のあの瞳がこれ以上揺れるのを見ていたくなくて……
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