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第6話

「…………」  ムカついたが、自業自得なのだと言い聞かせた。  自業自得  圭吾の気持ちがこちらにない事を認めたくなくて……  拳を振り上げ続けたのは自分だ。  殴り続けても、それでも傍に居てくれた圭吾に、辛いから出て行けと告げたのも自分だ。 『悪い事をしたら、自分に返ってくるのよ』  小さい頃に婆ちゃんに言い聞かされた言葉がぐるぐると耳の中を巡る。  ――パリン 「っ!!」  手の中で砕けてしまったグラスの音にはっと現実に引き戻された。  赤い雫が、ぽとんと滴る。 「恭司さん!?やっちゃいました?」  立て看板を出して帰ってきた壱がばたばたと駆け寄るのが視界の隅に見えた。 「ぅ あー……手ぇ切っちゃったんですね……」 「手当なんかしなくていい」  キッチンペーパーを慌てて持ってくる壱にそう言うと、「アホですか」と返される。 「他のグラスについたら洗い直しじゃないですか、いっぱいいっぱいなのに仕事増やさないで下さいよ」  水気があった分酷く出血しているように見えたが、傷自体は大したことがないようだ。 「出血多量で死にてぇ……」  手当を受けながらそう呟くと「バカですか」と言われた。 「君さ、オレ一応雇い主だって自覚ある?」 「一応でいいならありますよ。あ、一応雇い主なら仕事して下さい。  面接希望が来ましたよ」  人手が欲しい彼にしては仏頂面で……  オレは壱がくぃっと親指で指した方へと顔を向けた。  その先にフラミンゴが一羽突っ立っていた。 

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