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第13話

 自分が嘲笑われているような気がして耳を塞ぐと、ぐゎんぐゎんと耳鳴りが脳の中を駆け廻る。 「―――ケイ。ケイ……」  応えが返る事がないなんてオレが一番よくわかっていたのに……  幾度も繰り返す。 「ケイ…」 「呼んだ?」  どっと全身の汗が噴き出したのが分かった。  返事が返るなんて質の悪い冗談だ…… 「どうした?お腹でも痛いの?薬探す?」 「え、あ………」  逆光になったその顔は…… 「ケイ…」 「なぁに?」  少し首を傾げるように尋ねる。  薄い唇が笑う。  長い間見ていない、あの笑い。 「ケイ」 「だから、なに?テンチョなんか変だよ?」  テンチョ と舌足らずなその呼び方にはっとなる。  光に透ける、ピンクの髪。 「な……んで 入ってきた?」 「だって、呼んだでしょ?」  違うと言いかけて口を押えた。  計都……ケイト……ケイ…… 「呼んでない」 「え?だってさっきも 」 「呼んでないっ!!」  大きな声でそう否定すると、計都は驚いた顔で飛び上がった。  ベッドの端に腰掛けたまま居心地悪そうにもじもじと座り直す。 「この部屋には入るな」 「えっ……じゃ、向こう行く?」  こてんと首が傾げられる。 「向こうに?ああ」  そう言って追い出すために伸ばした手はするりと絡め捕られた。 「出来ればベッドがいいけどさ、文句言えないしね」 「は?」  絡んだ指がするりと動く。

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