14 / 101
第13話
自分が嘲笑われているような気がして耳を塞ぐと、ぐゎんぐゎんと耳鳴りが脳の中を駆け廻る。
「―――ケイ。ケイ……」
応えが返る事がないなんてオレが一番よくわかっていたのに……
幾度も繰り返す。
「ケイ…」
「呼んだ?」
どっと全身の汗が噴き出したのが分かった。
返事が返るなんて質の悪い冗談だ……
「どうした?お腹でも痛いの?薬探す?」
「え、あ………」
逆光になったその顔は……
「ケイ…」
「なぁに?」
少し首を傾げるように尋ねる。
薄い唇が笑う。
長い間見ていない、あの笑い。
「ケイ」
「だから、なに?テンチョなんか変だよ?」
テンチョ と舌足らずなその呼び方にはっとなる。
光に透ける、ピンクの髪。
「な……んで 入ってきた?」
「だって、呼んだでしょ?」
違うと言いかけて口を押えた。
計都……ケイト……ケイ……
「呼んでない」
「え?だってさっきも 」
「呼んでないっ!!」
大きな声でそう否定すると、計都は驚いた顔で飛び上がった。
ベッドの端に腰掛けたまま居心地悪そうにもじもじと座り直す。
「この部屋には入るな」
「えっ……じゃ、向こう行く?」
こてんと首が傾げられる。
「向こうに?ああ」
そう言って追い出すために伸ばした手はするりと絡め捕られた。
「出来ればベッドがいいけどさ、文句言えないしね」
「は?」
絡んだ指がするりと動く。
ともだちにシェアしよう!

