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第14話
指の間をくすぐりながら手がオレを促すように引っ張った。
ざわりと血の騒ぐそうなその触り方に驚いて、オレは慌ててその手を振り払う。
そんなオレの行動が良くわからなかったように、計都は首を傾げて微かな音を立てながらベッドの上に膝を乗せた。
オレの上に、圧し掛かる。
「な、に……」
「ね、泊めてくれるお礼に、イイコトしたげる」
掌が腹筋に沿うように置かれ、ピンクの頭がすりっと首元に擦り寄ってきた。
鼻をくすぐる他人の匂いにくらりとする。
「舐めていい?」
そう尋ねるくせに、尋ね終わる頃には計都の舌先はオレの肌に触れていて……
熱い筈なのに冷たい軌跡を残される。
「ちゅ」
ワザとらしいリップ音が耳を打ち、はっと我に返った。
強く押せば骨が軋み折れるんじゃないかと思わせるその体を突き飛ばす。
「ぅにっ!!」
どんっ床の上に落ちる音と、ふざけているとしか思えない悲鳴が上がった。
「あっ……たたたっ……」
腰を擦り、涙を滲ませたその目に見上げられて呼吸が止まりそうになる。
鼓膜を破りそうな勢いで脈打つ心臓の音がうるさく体の中を駆け廻り、先程冷たいと思ったその個所がじんわりと熱を持ち始めたのに気が付いた。
久しぶりの感触。
久しぶりの鼓動。
「テンチョ酷いっ!!何するんだようっ!」
猫の目のようなはっきりとしたアーモンド形の瞳が抗議に見開かれ、頬が不満げに膨らんだ。
圭吾とは違う拗ね方……けれど、やはり似ている。
「……で」
「うん?」
「出てけっ!!」
衝動に任せて拳を振り上げそうになり、寸前で抑え込む。
腕が震える。
明らかに暴力を振るおうとしたオレを見上げて、計都はそれが分からないかのように首を傾げた。
「……殴る? 痛いのは嫌だけど……殴っていいよ」
奥歯を噛み締めたような動きをした後、きゅっと目を閉じる。
そうすると、圭吾がキスを強請った時の雰囲気に似て……
「だからさ、家に置いてよ」
懇願。
キスを強請るような甘い内容ではなかったけれど。
歯を食いしばるその表情に、「出て行け」と告げる事は出来なかった。
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