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第18話

「食べないのなら出てけ」 「ぅっ テンチョがあーんしてくれたら食べるよ」  ふんっとしてやったり顔でふんぞり返る計都にイライラとした物を感じて箸を置いた。 「自分の立場分かってるのか!?オレは別にいて貰わなくていいんだ。毎日グラスを割るアルバイトなんかいらないからな」 「っ……」  計都はしてやったり顔を泣きそうな顔に変え、さくりと音を立ててレタスを箸で突き刺す。  それを睨み続け、口を開くも入れる事はなく皿に戻すを繰り返している。  目には一杯の涙を溜め、手は小さく震えている。 「……そんなに嫌いなのか?」 「 うん」  フラミンゴの羽のような頭をこくりと下げ、「ごちそうさまでした」とぽそりと告げる。 「……」 「……やっぱり……出て行かなきゃダメ?」  上目づかいでこちらを見た瞬間、ぽたんと雫がテーブルに落ちた。 「………」 「………」  返事をせずにいると、計都はのそのそと立ち上がり、荷物を掴んで玄関の方へとしょぼくれた足取りで歩き出す。  テーブルの上に広がる涙の痕に、つきりと胸が痛む。 「……卵は」  何故そんな事を言い出してしまったのか…… 「卵は食べれるのか?」  その言葉に、不思議そうな顔の計都はこくんと頷いて見せる。 「  じゃあ、座って待ってろ」  箸を置き、立ち上がるオレを不思議そうに見つめる計都の目は、訳も分からず拾われた子猫のそれとそっくりだ。  もっとも、先ほどまで出て行けと言っていた人間があっさりと座っていろと言うのだから、面食らって当然かもしれない。  当然、計都は困惑して動かない。  まぁ出て行くなら出て行くでいい。  オレは冷蔵庫から卵を取り出すと手早く混ぜてプレーンオムレツを作り、冷凍で残してあったご飯があったのでオムレツの隣にケチャップライスを乗せてやる。  それをテーブルに置いてやると、それまで突っ立っていた計都がこちらへと歩み寄ってきた。  服の裾をちょこんと引っ張る。 「いいの?」  傾げられた頭、ふわふわのピンク色の髪、その奥に覗く……猫の目。  「野良猫に餌をやっちゃいけない」そう婆ちゃんに言われていた小さな頃を思い出すその目は、けれどもう涙を溜めていない。  それが酷くほっとできて…… 「食え」  頭を撫でて圭吾の席だったそこへ座らせた。  小さな子供のようにきらきらと目を輝かせ、スプーンを構える。 「旗は?旗はないの?」 「ある訳ないだろ。さっさと食え」 「うんっ」  はぐっはぐっと腹を空かせた子供のような食べ方を眺める。  圭吾もそう、だった。  食事をしている時の、あの幸せそうな顔が……忘れられない……

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