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第22話

「愛あってこそだろ?」 「だーかーらー……」  昔からそうだった。  仲がいいとか言われていたけれど、会話が噛み合った回数は少ない。 「俺も、愛してるからな!!」  大きい声は朝方の病院では大きく響いて。  犬をかわいがるかのように撫ぜてくる兄を押しやった。 「もーいいって。鬱陶しいなぁ」 「冷たいなぁ   まぁ、何とかしてやるよ。今日はもう帰っていいぞ」  翔希が視線を巡らせるのに釣られてそちらを見ると、若い医者がこちらに駆けてくるところだった。  今時な好青年と言ったその医者は、人懐っこそうな顔をして袋を差し出してくる。 「薬、受け取ってきました」 「おう、助かった。こいつ研修医な」 「お手数おかけしました。ありがとうございます」  ぺこりと頭を下げるオレの隣で、翔希は袋を受け取ってぱたぱたと手を振った。 「またな」  あっさりとした言葉に怯んだようだったが、翔希とオレを交互に見比べ、仕方なくと言った風に踵を返していく。 「また後で!絶対ですよ!」  どこか捨て犬の耳としっぽが見えたような気がしたが、深くは聞かずに袋を受け取る。 「薬が一式入ってる。痛みは取り切れないだろうから痛がるとは思うが    」  ぽん  と背中を叩かれて薬の説明を受けながら建物の中へと促された。  

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