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第38話
ココアを温めた牛乳で溶いてやり、熱すぎて飲めないといけないだろうと冷たいミルクも少しそそぐ。
人参とグレープフルーツのサラダと食パンとチーズオムレツ、それにコーヒーとココア。
「ほら食べるぞ」
そう言うも、以前のようにまたテレビに夢中でこちらの言葉は聞こえていないようだった。
画面の中では、探偵役の弁護士が犯人を言い当てようとしている。
「ったく」
また騒がれるのも面倒だと、テレビは消さずに互いの席の前に置いた飲み物だけを入れ替えた。
「いただきます」
「……い っただきまぁー……」
そう言うも視線はテレビで、いただきますの言葉も途切れてしまう。
一言怒鳴りつけたい気持ちも沸いたが、ぐっとこらえて計都がコーヒーに口をつけるのを待った。
「あっ つ……ぃ……っにっうがぁぁぁぁいっ!」
どう聞いても余裕のありそうな声で叫んで計都は飛び跳ねた。
「あっつっ!にっがっ!いったぁいい」
どんっと拳がテーブルを叩く。
「テンチョっ酷いっ!!」
「あー……すまん。置くの間違えた」
「嘘だ」
「うん。嘘」
「テンチョっ!!」
涙目で睨んで身を乗り出してくる。
「ほら!舌火傷したっ」
「あーうん」
「どうすんの!?今夜は舐めれないよ!?」
「舐めなかったらいいんじゃないか?」
「いーたーいーっ」
べっと突き出された舌を見るも、どこを火傷したのか分からない。
「ほらぁ」
ここ!と指差す舌先を、ぺろりと舐めてやる。
「!?」
硬直した計都の額を押して椅子に座らせ、人参のサラダを押し出す。
「舐めときゃ治るだろ。ちゃんと食えよ」
「………うん、もう痛くない」
照れくさそうに言って計都はもじもじしながらグレープフルーツをつつく。
「ンな訳あるか」
「ええ!?」
がんっ とショックを受けて肩を落とす計都を見て……
「今、笑った!」
ぱあぁっと再び笑顔を計都が見せるから、オレはまた慌てて仏頂面に戻って熱いコーヒーを口に運んだ。
ふっと笑いが漏れる。
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