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第40話
一瞬合った目が『落ち着け』と告げるのが早いか、カウンターから飛び出すのが早いか分からない。
引きずられるようにしてついてきた壱ともども計都の前に飛び出す。
「な なに?」
いきなり飛び出したオレ達に怯んだようだった。
ぎゅっと拳を作り、背筋を伸ばす。
そうすると、客はオレよりも小さい事に気が付いた。
その身長差を利用して圧し掛かるように詰め寄る。
「うちの店員がナニか粗相を?」
背後からの照明を受けたオレは、こいつにはどう見えているのか……
「ぇ……あ、いや……」
「今後の参考にしたいんで詳しくお話を聞かせていただけますか?ちょっとこちらに」
「ちょっ!?なんで!?」
その手を鷲掴んでバックヤードに連れて行こうとすると、壱がとんとんと肩を叩いた。
「俺が代わります。店長が相手だと怖がっちゃってますよ」
ね?と客に微笑みかける。
「はぁ!?なんで俺がっ」
オレと比べると背も小さいし華奢な印象がある壱が出てきて、急に態度を変えた客が手を振り払おうとする。
ソレを無言で力を込め直して押さえていると、
「お客様、どうぞこちらへ」
ひんやりと冷たい空気を纏った壱がそう言い、代わりに引き取ってバックヤードへと連れて行った。
何人かいた他の客に頭を下げてから、背後の計都に振り返った。
「テンチョ?」
こちらを見上げる計都には、オレの顔はどう映っているのか?
せめて、怯えないで欲しい……
「テンチョ!怖い顔になってるよ?スマーイル!ね?」
そうえくぼを見せてにっこりと笑顔の計都に救われた気分になる。
「 大丈夫か?」
「うん?喉が乾いたよ~」
「 そっか」
そう言う計都に、ピンク色のカクテルを作って渡す。
飴色のカウンターに置かれたそれを、きょとんと見てからもう一度えくぼを見せた。
「酔わせてどうする気?」
「オレを布団にさせずに寝かせるつもりだ。喉が渇いてるんだろ?お代わりも作ってやるから飲め」
猫のようにこちらをじぃっと見上げ、ふふ と笑いながら甘い口当たりのそれに嬉しそうに口をつけた。
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