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第41話

 計都に酒を飲ました事はなかったが、なんとなく弱いのではないかと感じていた。  飲ませた酒は、分量を変えてある。  口当たり良く、アルコールはきつめに…  くてんとなり始めた計都を客から見えない位置に下がらせたかったが、裏はまだ壱が使っている。  二人で籠って15分、壱の事なので大丈夫だとは思うが、そろそろ様子を見に……と思った所でがちゃりと扉が開いた。 「あ。終わりました」  ネクタイを締め直しながらカウンターに入ってくる壱は、珍しく目の周りを赤らめていた。 「大丈夫か?」 「え?もちろん」  そう言った壱の後ろから、よたよたと扉を開けて客が出てくる。  オレが何か言おうとする前に、そいつは壱から逃げるように飛び出して行ってしまった。 「……何したの?」 「ナニも」  食い逃げしたとは言え、客に怪我を負わせたのではないかとその手を見る。  拳にケンカの痕がないかさっと見てみるが、綺麗なものだった。 「足の裏以外は使ってませんよ」 「その方が怖いよ」  どちらにせよ、裏が空いたのであれば計都を連れて行ける。  カウンターを枕にとろとろと目を閉じかけている計都を抱え上げた。 「やーらしいぃ。ナニするつもりで酔い潰したんですか?」  軽口を叩く壱を睨んでからバックヤードへと入る。椅子を並べて何とか寝かす事が出来るように整えると、そこに計都を下ろした。  計都はすっかり夢の中の住人のようで、椅子に下ろしても身じろぎもしない。  くしゃくしゃとピンクの髪をかき混ぜてやると、へにゃりと笑ってもごもごと寝言のような事を言った。  言葉にならないそれが、人の名前を象らないようにと願いつつ立ち上がる。

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