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第43話

 背負って帰り、部屋に入る。  華奢な見た目通りに軽い計都を運ぶのに苦労はしなかった。  ベッドに下ろしてその寝顔を覗き込もうとすると、うっすらと目が開いてこちらを見つめた。 「テ チョ 」 「なんだ?」 「舐めさせて……」  とろんとした目をしたまま、大きく口を開いて舌を出す。  その舌を、今朝と同じようにぺろりと舐めた。 「今日はもう、寝ろ」  やだ と鼻に掛かった声が漏れ、計都の手が縋りついた。 「俺まだ、ここに  いた、い」 「安心しろ。明日もココアを作ってやるから」  きゅうっと計都の目が細められる。 「ぅん」  笑顔かどうなのか微妙な表情で頼りなげに頷いた計都を、思わず強く抱き締めた。  きしりと撓る程強く抱いたのに、へらりと笑って頬を摺り寄せてくる。  ふわふわとした髪に鼻先をくすぐられながら温もりを抱き締めていると、いつの間にか瞼が落ちていた。  圭吾はお茶が好きだった。  緑茶を水出しした物を好んで飲んでいた。  圭吾は海よりも山が好きだった。  サーフィンか登山かで、喧嘩もした。  圭吾はコロッケが好きだった。  よく作ってくれとせがまれた。  圭吾は…  圭吾は?  もぞ…と動く感触で目を開けた。  下半身の辺りでピンクの毛玉がふわふわとしている。 「………おらっ!!」  掛け声と共に計都を投げ飛ばす。

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