46 / 101
第45話
日が真上からだいぶ過ぎた頃、部屋から目の周りを赤くした計都が顔を覗かせた。
「飯、食うのか?」
そう言うと、ぴくっと肩を揺らして頷く。
「座ってろ」
「……うん」
「はいだろ」
「 はぃ」
オレをちらりと見ては顔を伏せる。
そんな視線に気付きはしたが、オレは何も言わなかった。
約束通りの温めのココアを入れて、野菜のスープとカリカリに焼いたベーコンと目玉焼きとバターロールを二人分出す。
「 テンチョ。食べなかったの?」
「お前が起きてこないからな」
「ごめんなさい 」
熱いコーヒーを入れて椅子に座ると、テレビをつけるでもなくじっと座っている。
「どうした?テレビが見たいならつけるといい」
「 うぅん」
首を振り、計都は手を合わせて頂ますと呟く。
「ちゃんとスープも飲めよ」
「……はぃ」
いつものようにごねる事もなく静かに頷く姿に驚き、スープを持っていた手を下ろした。
ことん と言う音に、計都の肩が震える。
「 どうした」
「……」
閉ざされた唇は開かない。
「 言わないのならいい」
そう切り捨てて目の前の食事に集中しようとする。
するが、計都の動かない左手が気になって仕方がない。
「……全部じゃなくてもいいから、汁だけでも飲め。さすがにもうちょっと肉をつけた方が 」
「…………テンチョ」
「なんだ?」
そう返すがなかなか返事は返らず、仕方なく下げていた視線を計都の方に向けた。
アーモンド形の、形の良い目がこちらを見ていた。
捨て猫のようなソレ……
圭吾とよく似た目に、眩暈が起きそうになる。
「オセワニナリマシタ」
ともだちにシェアしよう!

