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第46話

「は?」  何を言っているのか?と答える代りに思わず椅子が倒れる程の勢いで立ち上がっていた。  いきなり何をと問いかける言葉が出ない。  開いた口からはぱくぱくとしか音が出ず、そんなオレを計都が不安そうに見上げる。 「俺、出て行くね」 「な  」  やっと声らしき音が出た。 「……なんでいきなり?」 「ん  俺、居ても何の役にも立たないから」  役?  彼を相手にしなかったからなのか?  一宿一飯の為に体を差し出して来た彼にとって、それを拒否されると言う事はそう言う事になるのか?  短絡的なそれに目が回りそうになる。 「それ、は……」  違うと、言ってやりたかった。  けれど、言った所でオレにはどうする事も出来ない。  ない袖は振れないんだ。 「ありがとうございました」  ぺこりと下げられた頭。  立ち上がろうとテーブルに突かれた左手。  そう、左手だ 「待て」 「へ?」 「手が治るまでは、オレの責任だ」  腕を掴んで座らせる。  ぽかんと見上げられた目を、見下ろす。 「手が治るまでは…ここに居ていい」    そう、その責任だけは……取らなくては……  計都はきゅっと目を細めると、こっくりと子供のように頷いた。  その仕草にほっとして座り直す。 「さっさと食え」 「スープ残してもいい?」 「駄目だ」  ぶぅと拗ねながら、それでも嬉しそうな計都の表情に安堵する自分がいた。

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