47 / 101
第46話
「は?」
何を言っているのか?と答える代りに思わず椅子が倒れる程の勢いで立ち上がっていた。
いきなり何をと問いかける言葉が出ない。
開いた口からはぱくぱくとしか音が出ず、そんなオレを計都が不安そうに見上げる。
「俺、出て行くね」
「な 」
やっと声らしき音が出た。
「……なんでいきなり?」
「ん 俺、居ても何の役にも立たないから」
役?
彼を相手にしなかったからなのか?
一宿一飯の為に体を差し出して来た彼にとって、それを拒否されると言う事はそう言う事になるのか?
短絡的なそれに目が回りそうになる。
「それ、は……」
違うと、言ってやりたかった。
けれど、言った所でオレにはどうする事も出来ない。
ない袖は振れないんだ。
「ありがとうございました」
ぺこりと下げられた頭。
立ち上がろうとテーブルに突かれた左手。
そう、左手だ
「待て」
「へ?」
「手が治るまでは、オレの責任だ」
腕を掴んで座らせる。
ぽかんと見上げられた目を、見下ろす。
「手が治るまでは…ここに居ていい」
そう、その責任だけは……取らなくては……
計都はきゅっと目を細めると、こっくりと子供のように頷いた。
その仕草にほっとして座り直す。
「さっさと食え」
「スープ残してもいい?」
「駄目だ」
ぶぅと拗ねながら、それでも嬉しそうな計都の表情に安堵する自分がいた。
ともだちにシェアしよう!

