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第47話
ふらふらと迷子になりそうな計都の首根っこを掴んで引き寄せる。
「ふぇ!?」
「こっちだ」
人ごみを抜けて歩いて行く。
たまの休日に、何故こいつの子守りをしなきゃいけないのかと、つい文句が出そうになる。
きっかけは計都の
『服がなーい』
の一言だった。
一人暮らしの大人の男だ、一日の汚れ物なんて知れている。その為に洗濯物はある程度まとめて行っていたが、旅行鞄一つ分しか服を持っていない計都は着替えがなくなる事がままあった。
生活スタイルを変えるつもりの毛頭ないオレは、ぶちぶち文句を言う計都を連れて服を買いに来ていた。
そのはずなのに、
「あ!クレープ食いたいクレープ!」
だの
「アイス!ソフトクリーム!」
だの
「ジュース買ってくんなきゃ歩けない」
だの言う計都のお陰でまったく当初の目的を達成できてなかった。
「 誰の買い物だと思ってるんだ」
「何買うの?」
「お前の服だよ!!」
オレンジの炭酸の入ったペットボトルを取り上げ、さっさと歩けと促す。
「でも、俺金ないよ~?」
「……じゃあなんで行くなんて言うんだ……」
「なんとなく?」
首を傾げてへにゃりと笑う計都の腕を引く。
「ったく」
「だって、家にずっといてもつまんないでしょ?」
「家でやる事だってあるんだっ」
「ええっ暇だよ!」
「オレは忙しいんだっ」
ずんずんと歩き、馴染のショップの前で止まる。
「買ってやるから選べ!」
「ふぇ?いいの?」
「服が無い度に泣かれる身にもなれ!」
そう言ってびしっと店を指差すと、計都は跳ねながら店内へと飛び込んでいった。
「テンチョ!ありがとーーー」
うきうきとした表情で物色し始める計都を見ていると溜息が出る。
くるりと店内を見渡し、以前圭吾と来た事があったと思い出して気が塞いだ。
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