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第48話

 休みの度に、出不精な所のある圭吾を連れてよく出かけた。 「テンチョーこれー」 「却下」 「ええっ」  ピンクとイエローの良くわからないキャラクターものを掲げる計都に、代わりの服を渡す。  赤い、シャツ。  圭吾が良く着てたような…… 「こう言うのが好き?」 「  ああ」  圭吾が、好んだタイプの服だ。 「じゃ。これにする!」  体に当てて嬉しげに鏡を覗く計都を見て、じわりと黒い気持ちが滲んだ。  圭吾もよくそうしていたな と思い出したせいもある。 「……後、これと、これもだな」 「ふぇ?そんなに要らない」  首を振り、必要ないと繰り返す計都を押し切って会計を済ませる。 「あと、ぼさぼさだろう。髪も切れ」 「どどどどどうしたの!?なんで!?」 「鬱陶しいのが家にいると嫌だから」  そう言ってまた迷子にならないように手を引いて歩いて行く。  何度か圭吾と通ったその道、もう通る事はないかと思っていたけれど……  レンガ造りに、こじゃれたステンドグラスの嵌ったその店に入ると、圭吾を担当していた美容師が顔を覗かせた。  計都を見てぎょっとしたようだったが、圭吾とは別人だと分かるとほっとしたように店内へと案内した。 「いつものようにさっぱりと、髪も人間らしい色に戻してくれ」  いつも?と繰り返したそいつの目の中に何が映っていたかなんて知りたくもない。 「やだっ!この色がいいっ!!」 「その色変だ」 「変でもいいの!」  ぷうっと膨れる計都をここで拗ねさせるのはと思い、カットだけを頼む。  本当にいいのかと伺うような視線を向けられたが、何も答えずにソファーに腰を下ろした。  昏い考えだと、自覚はある。  計都を圭吾に仕立て上げようだなんて……

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