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第49話

 さっぱりとなったフラミンゴの羽のような髪を掻き上げる。 「ぅん?」 「ピアスはしないのか?」 「乳首と皮に一回されたよ」 「耳は?」 「流しちゃうの!?」  何か不服そうな計都を待たせてピアッサーを買って家へと帰った。  半熟卵を作って豆苗と共にパスタを作ろうと手に取ると、テレビを見ていた筈の計都が警戒するようにこちらを見ているのに気が付いた。 「何それ」 「豆苗」  聞き馴れなかったのか、不安そうな顔をして首を振った。 「納豆に、豆腐に、黄粉に、そこらが食べれるなら食べれるだろ?」 「なんで?」 「大豆だから」 「ああ。甘い奴」  は?と返すと、 「自販機に売ってるあれ、美味しいよねぇ」  そう言ってニコリと笑った。  多分、小豆と間違えてるんだろうなと思いつつ豆苗を茹でる。  圭吾はそうやってソファーに寝転んで足をぱたぱたさせたりはしなかったけれど、ピンク色にさえ目を瞑れば、赤い服を着た計都は圭吾に見えた。  眩暈のような既視感に手が止まった。  くつくつと小さな音を立てて泡立つ鍋にぼんやりと視線を落とす。 「じゃあ、それも甘いの?」 「え   いや、甘くないから」 「えぇー」  しゅんとなってごろりと仰向きになる。 「えへへへ、新しいシャツ~」 「食べ物零すなよ」 「はぁい」  ゆったりとしたそのシャツを摘まんで眺める度に、裾が捲れて白い肌が見えた。  腰からなだらかに上がるラインは圭吾の弱い部分だった。  そこを攻めてやると良く啼いた。  縋ってくるのを、抱きしめるのが好きだった。 「テーンチョ!」 「   なんだ?」 「ありがとう!」  屈託なく笑うその顔に、微かな罪悪感が滲む。  オレはただ、もう一度圭吾に居て欲しいだけなのに。 「えへへへへ、ありがと!」 「ああ」  そっけなく返事をして、卵を剥いていく。  計都はその服の趣味が誰のものか知らない。  なのにただはしゃぐその姿に、胸が痛んだ。

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