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第51話

「エライねぇ」  くしゃくしゃと掻き混ぜられる髪。 「え  」 「禁煙って大変なんでしょ?」  いや どうだっただろうか……  圭吾の事でただただ落ち込んで、気がついたら吸わなくなっていた。  話で聞く程ニコチンに対しての禁断症状もなかった。  辛い時期ではあったが煙草に関しては辛くはなかった のだが……  髪をぐしゃぐしゃにしてくる計都の手の心地よさに、素直にうんと頷いた。  部屋に家具を買い揃える。  計都に任せると、原色スパイスの効きすぎたビビットカラーのみの部屋になるのですべてをオレが選んだ。  圭吾が使っていたベッドと同じ物、  圭吾が使っていたチェストと同じ物、  圭吾が使っていた姿見と同じ物、  圭吾と同じ……  圭吾がいた時とまったく同じには出来なかったが、かつてこの部屋を使っていた時と似た雰囲気は出せたように思う。 「テンチョ!良いの?」 「ああ」  かつて圭吾が居た頃の雰囲気が、胸を詰まらせる。  微かに、圭吾が戻ってきたのではないかと、そんな迷いが、オレを救う。  胸の中を、何かが満たしていく。 「ありがと」 「え?」  先程胸を乱した何かが、さらりと音を立てて零れ落ちる錯覚がした。 「俺なんかに  さ」  オレを見上げる真っ直ぐな目に息が詰まって目をそらす。 「嬉しい」 「そうか   」  そのピンクのふわふわ頭の中には、オレがどう言う目的でこの部屋を用意したのか疑うと言う事が存在していないのだろう。  微かな笑顔を盗み見て、一瞬満ちた胸の内がまたどうしようもない空虚になった気がした。

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