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第52話

「テンチョ!テーンチョ!!一緒に寝ようよー!」 「う、る、さ、いっ!!」 「あ、テンチョは堅苦しいから、キョーちゃん?キョウ?そのままキョウジ?」  ざわ  と悪寒がしたのはなぜだったのか……  何とも言えない表情をしていたのか、計都はそんなオレを見て戸惑った風だ。 「  オレは、雇い主だろうが」  こちらを見る計都の目に、オレは映っていたがどんな表情を取り繕っているのかわからなかった。  部屋へ入って来ようとした計都を蹴り出して戸を閉める。扉の向こうでは子供が駄々をこねるような声が響いていたが、それも時間が経つと治まった。  どうやら諦めたらしいと分かった瞬間、ほっとしたのと同時に一抹の……何かが過ぎる。  「……ふん」  それに気づかない振りをしてベッドへと入った。  今日こそは、穏やかな圭吾の夢が見れるだろうかと思いながら……  抱き締めた体が、しなる。  繰り返し喘ぎ、枯れた声。  細い体  知らない相手を呼ぶ声……  はっと目覚め、体中を襲った悪寒に体を抱き締める。  それでも悪寒は止まず、仕方なしに温かい物を摂ろうとベッドから降りて扉へと向かう。  おぼつかない足取りに、高熱を出した時の事を思い出したが熱はないようだ。  手が震えてドアノブが上手く回せない。  確かに、圭吾の夢が見たいと願った。  願ったが……あの日の夢を見たいとは思わない。 「くそっ」  結局両手を使って回したが……開かない。 「なんだ?」  蝶番が壊れたのかと思うが、扉の微かな動き具合を見ると扉の前に荷物が置かれてそれが開くのを邪魔しているようだった。

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