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第86話
相も変わらず猫のようだと思う。
「どこ行くの?」
「郵便局」
機嫌よく封筒を振ってやると、それに合わせて視線が左右に揺れるのが面白い。
「ケーキ食べたい」
いつも突拍子もないことを言う。
ケーキ屋は郵便局とは反対側だし、今から食べたらご飯が入らなくなるだろう。けれど、それもいいのかもしれないと、自然と笑みが零れた。
「しょうがないな」
手紙が折れないように手帳に挟んで、ジャケットを掴む。
「すぐ帰るからいい子にしてろよ」
「ん」
もじもじと、計都は何かを考える素振りでこちらに来てから、フラミンゴ色の頭を押し付けてきた。
「ありがと」
白い項にキスを落としたいと思ったのを悟られないように、その髪をかき混ぜる。
「 ふぇっ」
「ケーキ食う前に礼を言うな」
へへっとえくぼを見せて笑う計都は、腕をまた怪我したらどうするんだと何度も注意してるのに、ソファーに飛び乗ってまたくつろぎ始めた。
両手で雑誌を持っている。
右手はもう、大丈夫そうだ。
手帳の中には、圭吾に送るけじめの言葉が入っている。
家に帰ったら、
家に帰ったら?
計都を抱きしめて、
ずっとここにいて欲しいと告げるつもりだ。
青い空は秋晴れで、すっきりとした気持ちで見上げることができたのはいつぶりだっただろうか。
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