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第18話 もっと近くに (1/2)【柏木】

 「おう。いらっしゃい」ブルーのデニムに黒いジップアップパーカーという、カジュアルな服装の柏木が、ドアを開けて顔を出した。  「お邪魔します」草薙は、はにかみながら、軽く頭を下げ、玄関に靴を脱いだ。  これまでも、部活の相談や、勉強等の口実で、柏木は、自宅に何度か草薙を招いていた。  しかし、今日は、二人の仲を更に前に進めるため、柏木の両親が泊りがけで出掛けて不在の週末に、わざわざ、お泊りに来てもらったのだ。草薙の頬が染まっているのは、外が寒いからだけではなかった。  草薙が脱いだダウンジャケットを受け取りながら、柏木はニヤリと笑いながら冗談ぽく言った。  「(すみれ)、もしかして、今、エロいこと考えてる?」  「・・・そりゃ、緊張してますから。圭先輩は、慣れてるでしょうけど、僕、初めてなんですからね。」草薙が、わざと少しオーバーに拗ねて見せると、  「んんー。分かってるよ。可愛いなぁ。大丈夫、優しくする。絶対、菫が嫌がることとか、痛いことはしない。」  柏木は、草薙を背後から抱きすくめ、猫のように頬をスリスリとくっ付け、甘い声で囁いた。  恥ずかしがり屋の恋人の初体験を、少しでも良いものにしてあげたい、と、柏木は、秘かに意気込んでいた。  「喉、乾いてない?なんか飲む?」  「ううん」  「こないだのゲームの続きする?」  「ううん。たぶん僕、ぼうっとして、それどころじゃないと思う」  「じゃ、シャワー、一緒に浴びよっか」  「・・・・・。」  耳元で囁いたら、草薙の頬は更に一段熱くなった。返事を躊躇(ためら)っている様子だったので、くるりと、自分の腕の中で、身体の向きを反対に変え、向き合った。  「菫と一緒に風呂入るの、去年の合宿以来だな」と微笑むと、 「あ、あれは・・・、一緒に入ったうちに入るのかな」照れ隠しに、少しぶっきらぼうに草薙が答える。  「俺は、あの時、もう菫のこと好きだったから、すげぇ意識してたよ。実はガン見してた。背中流した時、ときどき触ったのも、あれ、わざとだから。」と、柏木は打ち明けた。  「えーーーっ! 僕も、圭先輩のこと意識してたけど、なるべく見ないようにしてた。色気がすごすぎて、まともに見たら当てられそうだった。」草薙も、思わず正直に打ち明けた。  「・・・菫も俺のこと意識してくれてたんだね。嬉しい」 柏木は、小さく音を立てて、草薙の頬にキスを落とした。  「さ、行こう。色々やんなきゃいけないこともあるしさ。そこも含めて、俺を頼ってよ」  柏木は、優しく微笑みながら、手を差し伸べた。草薙は、はにかみながらも、少し微笑んで柏木の手を取った。  脱衣場で、柏木は、男らしく、一気に自分の服を脱ぎ捨てた。全裸になり、振り向くと、草薙は、モタモタと、自分のカーディガンやシャツのボタンを外していた。  「ああ、もう。なんで、こんな脱がすの面倒な服、こういう日に着てくるの?俺への焦らしプレイ?」と、軽口をききながら、既にボタンが殆ど外れていた草薙の服を、上から引っ張って一気に脱がせた。  「だ、だって、どんな服が脱がせやすいかなんて、分かんないもん!」 頬を染め、上目遣いで、自分の上半身を女の子のように隠す草薙の姿に、  (かっ、 かーーーわーーーいーーーいーーー!!!!)  内心、萌え(たぎ)った柏木だが、あくまで「初エッチで恥じらっている彼女の服を優しく脱がせてあげる彼氏」な顔を崩さず、草薙のベルトを外し、ジッパーを下ろし、デニムと下着を纏めて下ろして脱がせた。  (こういう時って、頭は洗うもの? 身体は、自分で洗うの?)  草薙はまごついた様子だったが、柏木が平然とガシガシと自分の頭を洗いだしたのを見て、その隣で、おずおずと自分も頭を洗い始めた。「ん、ほら、」草薙が頭を洗い終わったのを見るや、柏木は、シャワーで上からお湯をかけた。  「せっかくだから、身体は洗いっこしよう? まず、菫が俺を洗って?」柏木は、首をコテンと横に傾け、ボディソープを付けたタオルを草薙に差し出した。  草薙は、少し困ったように、軽く眉を(しか)め、唇を噛んで内側に仕舞い込んだが、素直にタオルを受け取り、無言でタオルを揉んで、石鹸を泡立て始めた。  少しずつ互いの肌に触れ合って、羞恥心を和らげ、徐々にセクシーな気分になってもらうのが目的なので、この段階では、自分の下半身まで触ってもらう必要はない。柏木は、自分の手にもボディソープを取り、自分の股間を洗い出した。  草薙は、その様子を見て、柏木の首筋や背中を洗い始めた。  楽屋や合宿で着替える時など、草薙がこっそり自分の身体を盗み見ていることに、柏木は気付いていた。だから、直接見て、触れて、ドキドキしてほしい。  柏木の計算通り、優しくタオルを柏木の肌に滑らせる草薙の手や指の動きは、控え目ではあるが、柏木への愛撫そのものだった。背中から腰にかけての広背筋。二の腕の三角筋や上腕二頭筋。盛り上がった胸筋、シャープな腰回りの腹斜筋。  草薙の目が、次第にうっとりし始め、そこに、ほのかに情欲の炎がともる。  恥ずかしがり屋の恋人の、羞恥心の最初の一枚を剥ぎ取ったことを見て取った柏木は、「じゃあ、次は、菫を洗ってあげる」と、小さく微笑んだ。  最初は素直に洗われていた草薙だが、乳首や脇腹といった微妙なところに触れると「あ、あ、ねぇ、ちょ、ちょっと!」と、悶えるようにその身を捩らせた。  「ふふん。これまでの付き合いで、俺、菫の弱いとこ、けっこう知ってるからね」柏木は、少し悪戯っぽく笑った後、  「だけどさ、もうちょっと色っぽい声出してほしいな。その方が、お互い興奮して、もっと気持ちよくなるからさ。・・・っていうか、俺、菫に、気持ちよくなってもらいたい」と、真顔に戻り、草薙を見つめた。  「・・・ちゃんと感じてる。もう、勃っちゃった」草薙は、恥じ入るように、俯きながら言った。  「ありがと、正直に教えてくれて。菫に感じてほしくて、色々してるから、嬉しい」  二人は、改めて、正面から向き合った。柏木は、草薙の後頭部に手を当ててホールドし、「菫、好きだ」と、少し掠れた声で囁き、噛み付くように口付けた。  草薙が、荒い呼吸の中で自ら積極的に舌を絡めて来たのを感じ取り、柏木は、草薙の背中を、指先で(くすぐ)るように、(なま)めかしく撫で回した。  「はぁ・・、っ、あんっ」夢見るような潤んだ瞳で、草薙は、柏木にしがみ付き、甘い溜息をこぼした。  機は熟した。  恋人の頬やこめかみに小さいキスを幾つも落としながら、柏木は、手を草薙の後ろに伸ばし、しなやかな双丘を押し開いた。  草薙が、身体をピクリとこわばらせたので、「大丈夫。俺を信じて、任せて。中を洗う前に、少し解しておこう。」柏木は、優しく語り掛けながら、ボディソープを纏った指を忍び込ませ、まだ固く身を竦めている初々しい蕾を、周辺から優しくマッサージした。  少しでもリラックスできるように、草薙が好きな、優しく唇を食むキスを繰り返すと、再び、甘い溜息をつき、表情が緩んだ。すると、恥じらっていた蕾がふわりと開くように、そこは、柏木の指を受け入れた。  草薙は、恥ずかしそうに俯きながらも、甘えるように、自分の顔を柏木の肩に擦り付けた。 その様子から、痛みや抵抗感はないようだ。柏木は、慎重に、指を中まで差し入れた。緊張で固くなっているかと思いきや、意外とすんなり入っていく。中で指を回すと、思っていたより、柔らかい。これなら、思っていたほど時間はかからないかもしれない。  舌と舌を絡めるキスをしながら、呼吸の合間に「指、もう一本入れるね」と囁き、草薙が頷くのを確認してから、中に入れる指を追加した。草薙の表情に、艶っぽさが増してきた。ちゃんと感じている証拠に、控え目ではあるが喘ぎ声を我慢しなくなった。  苦痛や不快感がないか、表情や身体の反応に気を付けながら、内側を広げるように、二本の指をゆっくり動かす。  それにしても、初体験のはずの草薙の身体が、こうもスムーズに開くものか。  「菫、もしかして、自分でしてた?」 と訊くと、頬を染めて、きゅっと唇を噛み締め、恥ずかしそうに頷いた。  「どんな感じか知りたかったし。圭先輩に頼りっ切りっていうのも、主体性ないかなぁ、と思って。」  「そうだったんだ。いい感じだよ、柔らかい。」柏木は、御褒美のように、色っぽく微笑んだ。  シャワーヘッドを双丘の間にあて、草薙の内側にお湯を送り込み、吐き出させることを何度か繰り返した。  二人は、浴室を出ると、慌ただしくそれぞれの髪や身体を拭くと、全裸のまま、柏木の寝室に駆け込んだ。  抱き合い、唇を貪り合い、二人はベッドに(もつ)れ込んだ。

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