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第30話 恋愛のスパイス【草薙】

 互いの嫉妬が原因で喧嘩した後、無事に仲直りした二人は、激しく求め合った。  制服姿では、さすがにまずいだろうと、近くの量販店で適当な服を買って草薙は着替えた。いそいそとラブホテルにチェックインした二人は、部屋のドアが閉まるや否や、互いを食い尽くしそうな勢いで、激しく唇を貪り合い、ベッドに辿り着く前には、お互いの服を脱がせ終わっていた。  「・・・っつ、はぁっ、ああっ!」草薙は、最初から激しく喘いだ。  いつもは、甘くて優しい恋人の柏木が、今日は、ギラギラと欲情を隠さず、(おす)の色気を全開に、草薙に挑んでいる。キスも愛撫も、いつものように優しいものではなく、いやらしくて、強い。まるで、草薙の身体の奥底から、眠っている野獣を呼び覚まそうとするかのように。  「やぁああ、はぁああ、あ、あ、」  弱い耳や背中を、執拗に舐められ、強く吸われ、草薙は、嬌声を抑えることができない。あっという間に、中心が熱を持ち、先走りが滲み始めると、今度は、一転、ねっとりと、わざと気持ちいいところを外して来る。  「ひど・・い・。今日の圭先輩、いじわるだっ・・・」  草薙が、潤んだ瞳で抗議すると、柏木は、ニヤリと笑った。  「最後は、もうダメ、って言うぐらい、気持ちよくしてやるよ。天国、見てみたいだろ?」  背筋を、ぞくぞくとしたものが走る。野獣が引き出されるかと思ったら、今度は、草食動物のように喰われそうになっている。自分の快感は、柏木の手に握られ、そして翻弄されている。  そう感じた瞬間、真顔に戻った柏木が、真剣な声で言った。  「(すみれ)を、俺じゃないとダメなカラダにしたい」  再び、草薙の背筋がぞくぞくした。目の前の魅力的な雄は、自分を(とりこ)にしようと、独占欲に燃えて、必死になっている。強く、自分を求めている。容赦ない愛撫に隠された柏木の痛いほどの愛情を、全身で感じ、草薙の身体は、更に(とろ)けた。    身体の至る所に、紅い花が咲いたように、強く吸われた跡が付いているのが、自分でも分かった。普段の柏木は、「跡が残ると、体育の時とか困るだろ?」と草薙を気遣い、そんなに強いキスはしない。でも、今日は、まるで、草薙の身体を見たり触れたりしようとする人を牽制するために、マーキングしようとしているようだ。  草薙は、柏木の頬を優しく撫でながら、甘い声でねだった。  「ねえ、キスして。僕に、初めてキスしてくれた時みたいに。僕、圭先輩と気持ちが通じ合って、すごく嬉しかったんだ。あの時の気持ちを、もう一回思い出したい」  柏木は、いつもの優しい恋人の顔に戻り、切なげに目を細め、頷いた。  (菫、好きだよ、大好きだ)  (僕も、圭先輩が大好き)  そうっと、唇同士が軽く触れ合うだけのキス。だけど、気持ちは、言葉よりも早く強く伝わるキス。  唇が離れ、お互いに目線を交わすと、どちらからともなく、次第に甘く口付けた。お互いの唇を食み、軽く吸い上げ、互いの口内を優しく愛撫するように、舌を絡め合う。    うっとりと満足気な草薙の姿を眺め、柏木は、嬉しそうに言った。 「さ、心が満たされたところで、今度は、身体を満たしてあげないとな。菫に使ってないテク、俺、まだ、いっぱい隠し持ってるからね」  それからは、再び本気モードに突入した柏木に、前も後ろも、泣きたくなるぐらい舐められ、しゃぶられ、舌を突っ込まれ、草薙は息絶え絶えになった。  荒い息を整えようと、彼が脱力したところで、背後から柏木に貫かれた。  「いやぁあああ」  奥まで、ズシンと衝撃が走ったと思いきや、今度は、抜け出ていくのではないかと思うくらい引かれ、ねっとりと腰を使われ、草薙は、もどかしさに悶え、涙ぐんだ。  「ふっ、んんん、ん、あ、あ、あ、いやぁ」  身体を(よじ)って、逃れようとすると、強い腕で引き戻され、今度は、繰り返し力強く打ち付けられる。  「あ、あ、あん! あっ!」  前に触れられていないのに、昇りつめそうな感覚がある。草薙は、まだ、後ろだけで絶頂に達する経験をしたことがないのに、本能的な予感がした。身体中から汗が滴り落ちているのに、鳥肌が立った。  「ああああぁ」  近づきつつある絶頂を期待しながら、譫言(うわごと)のように草薙が喘いだ時、柏木が、その背中を草薙に重ねるように覆い被さり、これまでの前後のピストン運動から、ぐりぐりと、草薙の良いところに擦り付けて、掻き混ぜるような動きに変えてきた。  「ひゃああああ!」  背後の柏木を持ち上げそうな勢いで、背中を仰け反らせた草薙の耳元に、柏木が、少し(かす)れた声で囁く。  「いいか? もっとしてほしいんだろ・・・? いってみな、もっとして、って」  草薙の顔は、もう、涙や汗や鼻水で、ぐちゃぐちゃになっている。  「・・・もっと、してっ・・・・! けい、おねがい、っ・・・!」  この日、草薙は、これまで経験したことがない深いオーガズムを何度も与えられた。このまま宙を揺蕩(たゆた)ったとしても、きっと柏木が連れ戻してくれる。疑いもせず、最後の絶頂の中、草薙は、自分の意識を手放した。 【筆者・羽多より】 お読みいただき、ありがとうございます! このお話は、7/7、あと一話で本編完結となります! 続けて、スピンオフ作品、全三話を掲載します。 もう少しだけ、このお話にお付き合いいただけると幸いです。

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