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番外編:菫のキャンパスライフ (2/2)
「ふ、うっ……」
トレーニングで血行の良くなった身体を、ぬめる指先で撫で回されては堪 らない。たちまち血液が集まり、胸の突起と下半身が芯を持ち始めた。耳に口付けられ、胸の頂を摘まむように、ひねりながら撫でられ、菫 は漏れそうになる声をこらえた。圭 は短い爪を使って、勃ち上がった胸の突起に更なる刺激を与える。
「ん、んっ……!」
唇を口の内側にしまい込むように噛み締めてこらえ、イヤイヤをするようにかぶりを振ったが、余計に圭を煽るだけだった。背後から聞こえる彼の息遣いは、荒く、熱い。背後に触れてきた彼自身も既に興奮で屹立している。
「毎日会えるようになって嬉しい……」
寂しかったのは、自分だけじゃなかった。圭がぽろっと漏らした、子どものように素直な言葉は、彼の本心だと思った。その切なげな声に、喉の奥と胸が熱くなる。
「僕も……」
小さな声で答えると、満足げな溜め息と共に圭の手は、優しく菫の脇腹を滑って腰へと下りていく。気持ち良さとくすぐったさで、身体が捩 れて、震える吐息がこぼれてしまう。
「また逞しくなったな、菫。けっこう鍛えてるだろ? 広背筋も腹斜筋もラインが綺麗だ。すごくセクシーだよ……」
「……早く、圭に追い付きたいから」
圭の腕の中で身体を翻し、目を見つめながら囁きかけるや否や、その首に両腕を回し、柔らかな唇を押し付ける。
荒い呼吸の中に微 かな喘ぎ声を混じらせながら、二人は唇を貪り合った。胸と胸を合わせると、互いの屹立も触れる。自然と菫の腰は艶かしく揺れ始めていた。
「すご……。菫、もうガチガチじゃん」
「圭だって。……こうやってキスとかするの、一ヶ月ぶりだね」
二人の抱擁は、菫の高校の卒業式以来だ。色々な手続きや、進学を機に地元を離れる友人との別れを惜しんだりで、なかなか恋人との時間が持てなかった。テレビ電話やテキストの交換だけでは募る思いは満たされ切らず、悶々と若い身体を持て余していたのはお互い様だったようだ。
「ねえ、菫。このままして良い……?」
快感に目を細めた圭の色気に、菫は頬を染めながら、どうにか理性を働かせ、必死に言い募る。
「でも、ゴムとかローション無いでしょ?」
ニヤリ得意げに、圭は旅行用ポーチの中からローションのボトルとコンドームのパッケージを取り出してみせた。
「もしかして、僕をシャワーに誘った時から、ていうか、ジムに誘った時から、そのつもりだったの?」
疑わしげにジト目で圭を睨むと、彼は拗ねたように口を尖らせ、甘えた声を出す。
「だって、もう一か月も菫とえっちしてない。それに、高校時代は結局一回も学校ではできなかったからさ。大学では一遍くらい、してみたかったんだよ」
二人の年の差はわずか一歳だが、高校生にとって一年は大きい。普段は大人っぽい圭が甘えてくれたのは、なんだかくすぐったいような、むず痒いような気持ち良さがある。
「……今回だけだよ」
「やった! 菫、ありがとう」
恋人の許しを貰い、圭の愛撫は更に熱を帯びる。自分自身に湿りを垂らし、首筋や肩先に口付けを落としながら背中に手を回して抱き寄せると、二人の引き締まった固い腹の間で、昂りが互いに愛撫し合う。菫も圭にしがみつき、さっきよりも激しく腰を動かす。
「はっ、ああ……」
「んっ……、気持ちいよ菫」
引き締まった双丘の間に、戯れるように圭の指がそっと触れる。菫は自ら背を向けた。
「ねえ、早く」
「積極的だな菫。俺、嬉しいんだけど」
「ちが……っ! あまり長く激しく動いてたら、周りの人に変だと思われちゃう」
「分かった。じゃあ、最短で菫をイカせる」
恋人との時間をいつくしむような、ゆったりした愛撫が、まるでギアが切り替わったように快楽を煽り立てる動きに変わった。圭は片手で菫の前を扱きながら、もう片手で会陰を強めに押す。時折、ねだるように突き出した双丘のあわいに躊躇なく入り込む指は蕾を撫で付ける。
「や、あんっ!」
堪らず菫は艶かしい声をあげ、捕まるところが何もないシャワールームの壁に爪を立てる。自分で慰める時とは、リズムや強さが少し違う。だが、全てを安心して委ね、リラックスできるからか、圭の手に包まれると、菫はいつも、あっという間にのぼり詰めてしまう。前が張り詰めると、身体の中の良いところが、ぷっくり存在を主張し始める。外から押されると、鈍い快感が腰の奥を襲う。
先端からこぼれる蜜を纏 った圭の長い指が、菫の蕾のふちをなぞり、時折、掠 めるように入口へ入り込む。もどかしさに、菫は仔犬のように鼻を鳴らす。
「ふふ。もう中に入れて欲しいんだ?」
からかうような口調だが、圭の声も上擦 っている。早く恋人と繋がりたい。言葉にせずとも、熱い肌と乱れた呼吸が雄弁に互いを求める二人の心を語る。
ぬめる指先が後孔へと差し入れられ、熱い吐息を漏らす。
「あつ……い……」
背中を仰け反らせて喘ぐと、その拍子に良いところを掠め、菫は更に身体を捩る。
すぐ外に、人がいるかもしれない。認めたくはないが、この少し普通ではない状況がスパイスになって、余計に快感を高まらせているのだろう。
「来て……っ」
抑えた喘ぎ声の中で囁くと、すぐさま圭は、自身の昂りで背後から菫の蕾を貫いていく。
「ああ……っ……」
全体を中に埋めたところで、菫の背中に胸を密着させて抱きしめる。
「菫、大好きだよ……」
「僕も……」
言葉でも互いの気持ちを確かめ合って、圭は抽送を始める。下から突き上げて奥を抉るように強く突いたかと思いきや、良いところを擦るように小刻みに前後しながら引く。大学に入ってからというもの、トレーニングに力を入れ、一段と逞しさを増した圭の腰の動きに、菫は呻いた。
「あっ。ダメ、もういく」
「ん、分かった。俺も追い付くから、ちょっとだけ待って……」
「ああ、ああ、やあっ」
恋人の分身を離すものかと言わんばかりに、菫は何度も収縮して圭を締め付ける。身体を密着させ、身体を震わせながら二人は達した。
「はぁ……。ヤバいくらい気持ち良かった……」
菫は壁に、圭は菫の背中にもたれ、しばし恋人たちは久し振りの抱擁の余韻を味わった。互いの肌の感触や、呼吸を感じる。圭が、菫の背中を優しく撫でながら満足げな吐息を漏らすと、激しく背中がびくついた。
「クシュン!」
「……やべ、冷えちゃった? 大丈夫か菫。もう一回、熱いシャワー浴びようぜ」
慌てて圭は追加コインを投入し、丁寧に菫の頭の上からお湯を掛け、身体に付いたローションや体液をも流す。しかし時すでに遅し。興奮で冷えのことすら忘れていたが、まんまと菫は風邪を引いてしまい、
「二度とジムのシャワーではしない」
そう、改めて圭に言い放った。
(じゃあ、別の場所なら良いんだな?)
そんな不埒な考えで、圭が手ぐすねを引いて逢引の場所を物色しているなんて、思案の他 の菫なのだった。
おしまい
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