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第97話 クラスの噂話

インハイ予選はうちの学校の バレー部の勝利で幕を閉じた。 次はインハイへ向けて、6週間ほどの 時間がある。 殆どの運動部の先輩たちは、 これを機に引退し、 3年生は受験モードに切り替わった。 「おはよ~ 昨日はお疲れ様!」 奥野さんが元気に教室に入って来た。 「おはようございます、奥野さん。 そちらこそ、お疲れさまでした。 それにお弁当、ありがとうございました」 「いえ、いえ、皆に喜んでもらうと、 私も作り甲斐があるってものよ! 来週からバイト楽しみだね」 そう話していると、青木君が 「よ~ 皆の衆!」 と言いながら教室に入って来た。 「昨日は凄かったですね。 僕、バレーボールが大好きになりました。 スポーツ選手って本当にかっこいいですね!」 そう言うと、青木君が無い前髪をさっと上げたような ジェスチャーをして、 「そうだろう? そうだろう? もっと女子が見に来てくれれば……」 と言ったところで、奥野さんに頭をスパーンと 叩かれていた。 この二人は相変わらず仲が良くて、 見ている僕までホンワカと幸せな気持ちになって来る。 「そう言えばお前、 瞳んちでバイトするんだろ?」 「はい、僕、凄く楽しみで!」 「佐々木先輩が凄く心配してたぞ。 何でも、ナンパされたんだって?」 青木君がそう尋ねると 奥野さんが、 「そうなのよ~ もう、アプローチ受けまくり! それも男性にばかり! でもさ、なんかや~になっちゃうよね。 こんなピチピチな女子高生も居たのにさ! でも、矢野先輩が自分もバイトするって 慌てて駆け込んできたときは 度肝を抜かれたわ! 一体どうしたの?!って」 「あ~ ありましたよね。 あの時は僕もびっくりしました。 まあ、僕がびっくりしたのは 出待ちまでして告白して来た人にですけど……」 「そうよね、あの後も結構電話あったのよ。 赤城君もそうだけど、 矢野先輩を尋ねる電話もね」 「そうそう、矢野先輩も一杯メモ貰ってましたもんね。 僕のメモは直ぐにゴミ箱だったのに、 自分はちゃっかりとポケットに入れてたんですよ! まったくもう!」 「矢野先輩は赤城君が絡むと過保護だもんね~ 赤城君のお父さんみたい!」 そう奥野さんが言うと、 「そう言えばな、佐々木先輩が言ってたけど、 矢野先輩、何人かのアプローチして来た人と デートしたみたいだぞ?」 と青木君が言ったので、 僕と奥野さんは、 「え~~~~!!!!!」 と教室中に響き渡る大声を出してしまった。 「僕聞いてませんよ! そんな話!」 「まあ、お前に言う義理もないだろ?」 の青木君の言葉に、 何だか胸がモヤモヤとしてきた。 僕のメモは捨てたくせに 自分はちゃっかりとデート? そんなのは理不尽すぎる! そう思ってワナワナしていると、 「何がそんなに気にいらないんだ?」 の青木君の言葉に、どうしてだろう? と自分でも考えてしまった。 よ~し! 放課後とっ捕まえて吐かせてやる~! そう思って、待てよ? これってプライバシーの侵害? そうだよな、先輩にもプライバシーはあるよな。 もしかしたら僕には知られたくない事もあるだろうし…… そう思って、いや、待てよ? 先輩だって隠し事はするなって言ってるのに、 僕には隠し事? いや、これって、先輩にとっては 隠し事では無いのかもしれない。 そう思っているうちに、 頭がグチャグチャとなって来て、 もう先輩が誰とデートに行っても構わないや と思うようになってきた。 「ちょっと、赤城君!」 そう呼ばれて横を見ると、 僕の横の席の柴田さんが、 「先生来てるよ!」 とそ~っと教えてくれた。 5月から、毎月クラスでは席替えがあっている。 今の僕のお隣は、柴田香さんと言って、 何時もニコニコとした可愛らしい女子だ。 僕は起立の声がかかったのも聞こえずに、 矢野先輩の隠し事を考えていた。 席に着いた後、柴田さんから 折りたたんだメモが回って来た。 『ねえ、さっき、矢野先輩が どうのとか聞こえたんだけど、 矢野先輩の事知ってるの?』 そっか~ 柴田さんは僕と先輩が 仲いいこと知らないんだ。 そう思って、 『クラブの先輩です』 と返すと、 『先輩って彼女いるの?』 と返って来たので、そう来たか! と矢野先輩のモテぶりを考えると、 納得もした。 そしてそれが佐々木先輩じゃ無くて 良かったとも思った。 『それでどうなの?』 『え~ 僕、先輩のプライバシーは 答えられません。 直接先輩に聞いてください!』 『じゃあ、助けて!』 『え?』 『恥ずかしいじゃない? 告白なんて 振られちゃうと怖いしさ』 あ~なんか分かる、その気持ち! 助けてあげたいけど…… 僕自身がちょっと恋愛では 先輩とすったもんだあったし、 どうしよう~?と思たっら、 「こら~! そこの二人! なにをコソコソ、イチャイチャしてる!」 と先生に怒られたので、 皆が一斉に僕達を見た。 そして皆がヒソヒソと、 え~ あの二人ってそうなの? もしかしてこの席替えが二人を結ばせた~? と言ったかと思えば、 噂の内容が180度回転して、 え? 赤城君って生徒会長と 何かありそうな感じじゃなかった? ほら、体育祭の時の借りもの競争…… だよね、そう言えば、手をつないで走ってたよね。 お弁当も一緒に食べてたよ…… そう言えば、体育祭の練習で 体操服借りて無かった? 二人付き合ってるの? え~って事は赤城君ってα? それとも…… と皆の噂がどんどん 僕と佐々木先輩の方へ向けられてきて、 僕は焦り出してしまった。

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