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第6話(しずく)

「しずく、仕事」 『え』 「今日の19時から」 『なんで』 「なんでも何も仕事だから」 『学校だけど』 「何時まで?」 『17:30』 「迎えに行くから。飯食ってから送ってやるよ」 『えええ、おれ、お、おもらしとかできないと思うけど』 前に仕事をしてから1週間半くらい経っていた だから、おれもあれ以来おもらしとかしてないのに そんなの、できるわけない 「できるよ、お前なら」 『できない、』 「学校の前まで迎え行くから」 と、いおりさんは俺の頭を撫でてタバコを吸い始めた 『いおりさん、』 俺はそんなの、しないのに このまま忘れてくれてたらいいなって思ってたのに やっぱりそうは甘くなくて 学校にいる間も 後のことを考えると 憂鬱だった 学校が終わって 校門から出ると プ、と短くクラクションが鳴らされて 振り向くと 『祈織さん!』 黒い、お金持ちみたいな車に乗った 祈織さんが窓を開けて俺を呼んだ 「おかえり」 『いおりさん』 「乗って」 『うん』 と、言われたとおり 助手席に乗ると すぐに車が発車する 「何食いたい?飯」 『えっと、ハンバーグ』 「ファミレスな」 と、近くのファミレスに連れて行ってくれて ハンバーグを注文する 「今日の相手だけど」 『…うん』 「通ってる期間は長くないけどいい人だよ。4回目くらい。今回はオプションあり」 『オプション?』 「コスプレ」 『…どんなん』 「普通の制服だよ」 『ふーん』 「お前機嫌悪いな」 『だって、』 「仕事もらえんだからありがたいって思えよ」 『だって、うまくできないかもしれないし』 「薬、使う?」 『薬?』 「利尿剤」 『え、』 どうしよう、 そんなの、使わなきゃ行けないのかな どうしよう、と迷っていると 祈織さんは立ち上がった 「ドリンクバー、取ってくるけど何がいい?」 『コーラ。炭酸強いと飲めないからなんか混ぜてきて』 「なんかってなんだよ」 『なんでもいい』 しばらくして戻ってきた祈織さんは 俺の前にコーラと 自分の前にはコーヒーを置いて 座った いただきます、と 持ってきてもらったコーラを飲むと なんか未知数な味がした 『…何混ぜたの』 「アイスティー」 『普通オレンジジュースか白ぶどうでしょ』 「色的にこっちのがいいだろ」 と、見た目しか気にしない反応をされて 黙ることしかできなくなった いや、だって、おれもオレンジとか言わなかったし まぁコーラ&紅茶も未知数な味するけど底まで不味くないか、とそれを飲んだ しばらくすると ハンバーグが運ばれてきて すぐにお腹がなった 「食ったら」 『いただきます』 と、すぐにフォークを持って フォークでハンバーグをぶっ刺して食べ始める 「しずく、ナイフって知ってる?」 『……しらない』 いいじゃん、ファミレスなんだし、と そのまま食べる すぐに祈織さんのオムライスも運ばれてきて 祈織さんも食べ始めた 『祈織さんってオムライスすきなの?』 「べつに普通」 『ふーん』 「スプーンだけで食えるから楽じゃん」 と、いうから きっと食べ物にはそんな興味無いのかな 俺が作っても いっつも可もなく不可もなくって感じだしな 俺が作らなきゃゼリー飲料しか食わないしな 「しずく」 『なあに』 「おかわり持ってきて」 『なにがいいの?』 「白ぶどう」 と、グラスを渡されたから ついでに自分のも持ってこよ、と 半分くらい残った自分のグラスの中身も飲み干して一緒にとりにいく つぎは何飲もうかな 食後はちょっとコーヒー飲みたかったけど この前コーヒー飲んで失敗したから 他のにしよ、と アイスティーを持ってかえる 『はい、白ぶどう』 「ありがと」 と、さっさとオムライスを食べた祈織さんは 白ぶどうを飲んだ 『白ぶどううまい?』 「うまい、1番うまい」 『嘘っしょ』 「嘘じゃねえし」 オムライスはべつに普通って言うくせに 『おれも白ぶどう飲みたくなってきた』 「取ってくれば」 まぁ、飲み放題だし、と 白ぶどうをとりにいく なんか ハンバーグ食ってお腹もいっぱいだし、 満足してきた 席に戻ると 食べ終わったお皿は下げられていて 祈織さんは待っていた 「そろそろ行くから早く飲んじゃって」 『えええ、もうちょいゆっくりしたいのに』 「着替えあるからそんな時間ねえって」 と、言われ、一気に白ぶどうを飲む 「よし、行くか」 と、先に伝票を持ってきて立ち上がる 祈織さん 『まって、いっぱい飲んだからおしっこ、したくなっちゃった。トイレ行ってきていい?』 「えええ。今出して大丈夫なの?」 『だって、これじゃあたぶん、始まる前にもれちゃう』 19時からって言ってたから 今18時過ぎ 1時間もきっと我慢できない 「…行っといで」 と、許可を得て 急いでトイレに向かった 漏れちゃう漏れちゃう 冷たいの一気に飲みすぎたからかな アイスティーってトイレ行きたくなっちゃうのかも トイレを済ませてお店から出ると 祈織さんは車でタバコをすいながら待っていた 『お待たせ』 「これ、飲んどきな」 と、渡されたのは 『あったかいおちゃ』 「しずく冷たいのばっかりがぶがぶ飲んでたから腹冷やすだろ」 『ありがとう』 たしかに、エアコンもきいていたらから 半袖の腕がひんやりしていた あったかいお茶わざわざ買ってきてくれたのかなって嬉しくなりながら それに口をつける 車のエアコンもちょっと効いてるから あったかいお茶が嬉しくて 少し多めにそれを飲 「後ろの袋に今回の衣装と小道具入ってるから」 タバコを吸い終わった祈織さんは 車を発車させ 言葉だけで俺に指示をした 『うぃい』 と、それを取って中を見ると 言われたとおり普通のブレザーの高校生の制服だった 「今日の依頼人の説明するから聞いといて」 『うん』 「今日の依頼は長谷川様。たしか20代後半だったか?真面目そうな人だよ」 『ふーん、』 「で、希望は長谷川先生って呼ぶこと」 『長谷川先生』 なるほど だから制服なんだ 「で、数学教えて貰ってね」 『数学?』 と、紙袋の中を見ると 数学のドリルが入っていた 『これ数学1って書いてあるんだけど』 「1年生設定だから」 『ふーん』 「後は前回と一緒で来たらお茶かコーヒーか聞いて2人分入れて、勉強しながら様子みて[仕事]して」 その、様子みて仕事が いちばん不安なんだよなあ

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